■日本語の文構造と似ている韓国語:日本語文法の構築に役立つか?

      

1 日本語と似ている韓国語の文法

韓国から来た留学生から、日本人にとって韓国語を習得するのは簡単だと思いますと言われたことがあります。もし時間があるなら、韓国語を勉強してくださいと言われました。日本人学生の中にも、韓国語を習う学科があって、短期の留学にも行っています。

野間秀樹『日本語とハングル』にも、日本語と韓国語で[似ているのは、文法です][文の構造はほとんど相似形を成していると言ってもいいほど、似ています](p.104)とありました。ともにアルタイ語の系統の言語のようですが、それ以上に近いようです。

[アルタイ諸語にはみな助詞に当たるものがあります。「の」「に」「を」などによく似た働きを持つ助詞があるのです。ところが、「は」と「が」の両方をもつ言語はなかなか見当たらないのです](p.112)。日本語と韓国語の文構造の近さを感じます。

       

2 近さの中の違い

日本語では、「私は行きます」「私が行きます」「私、行きます」という言い方が可能です。[韓国語でも「は」に当たる助詞、「が」に当たる助詞があり、なおかつ、助詞なしの場合も、日本語とそっくりに用いることができる](p.113)そうです。

一方、[日本語の連体形は終止形と同じ形になり得ますが、韓国語では連体形と終止形は常に異なった形](p.107)になります。また韓国語にも[「の」の役割を果たす助詞があります](p.116)が[「AのB」はむしろ「AB」というのが基本](p.118)とのこと。

[韓国語から見たら、日本語にはやたらに「の」が出てくる](p.118)と感じるようです。「昨日の帽子の人」という言い方などは、[韓国語母語話者から見ても、もう驚天動地の世界](p.119)と記されています。近いから違いも目立つのでしょう。

     

3 日本語文法の構築には役立たない

日本語の文法を考えるときに、韓国語を考慮する必要があるのか、その辺を気にしたことがありました。似ていることは間違いないでしょう。それは韓国語を学ぶ学生たちからも聞いていましたし、日本に留学に来た韓国人からも聞いていました。

文構造が近いことは『日本語とハングル』を見ても、わかります。しかし「第四章 ハングルから日本語文法を照らす」を見ると、韓国語に言及した部分をカットしても、日本語の文法を考えるのに支障がないのです。やはりそうかという感じがします。

韓国語の「が」にあたる助詞は、16世紀後半に[現れ始めました](p.113)とも記されていました。もし韓国語の文法が完備されているのなら、その文法の構築方法が日本語の文法を構築するときに役立つかもしれませんが、そういうこともないようです。

かつて中国人留学生が、英語の文法に比べて、日本語の文法は整備されていないと言ってきました。中国語の文法も確立してないからねと答えると、早く日本語の文法を作ってくださいというのです。その学生は各教科の教科書が日本のコピーだと知っていました。