■成果を測る基本:顧客と利益

      

1 顧客と利益

マネジメントというのは、成果を上げるためのものです。成果を測る場合、基本になるのは顧客と利益ということになるでしょう。ただし、これは営利組織の場合に言えることです。非営利組織の場合や自己マネジメントにおいては、修正が必要になります。

営利だろうが非営利だろうが、組織の場合、対外的な関係者が不可欠な存在です。組織の活動を及ぼす対象者は、自分たちの組織内部の人ではありません。組織外にいて組織の活動を享受する対象者を顧客と定義するとき、顧客が成果を判断する基盤になります。

自己マネジメントの場合、自分が自分に対して働きかける行為は、自分を自分の顧客と位置づけて行う行為だと考えることも可能です。こう考えれば、自己マネジメントの判断基準を顧客とすることができます。では利益を、どう扱ったらよいでしょうか。

       

2 顧客から獲得する利益

営利組織の場合、利益は事業の継続に不可欠なものです。ところが非営利組織になると、積極的な意味での収益は存在しません。相手からの対価が期待できないためです。ただし非営利組織の事業を継続するだけの資金は必要になります。

いわゆる継続の費用としての利益が必要であるということです。必要な経費を確保しておけば、活動は継続できます。潤沢な資金があれば、活動の領域が広がられるようになるはずです。しかしここでの資金は、顧客から対価として獲得したものではありません。

自己マネジメントにおいては、継続の費用という概念も使いにくくなります。それでも自己の生活がなければ、自己マネジメントも成立しないという点から、生活基盤の形成に不可欠なものとして、利益の概念を使えるかもしれません。ただズレが生じます。

     

3 顧客が主、利益が従

こうしてみるとドラッカーが営利組織の目的が「顧客の創造」であるとしたのは、慧眼だったというしかありません。顧客に提供する業務の対価によって利益が生じるのですから、営利組織の場合でも、顧客が主で、利益が従という扱いになります。

営利組織においても、顧客と利益は対等ではないということです。非営利組織においては、顧客のみを成果の対象とすれば十分でしょう。顧客の数や、顧客の上達や満足度などから成果を測定することが出来ますし、それが適切な基準として作用するはずです。

自己マネジメントの場合でも、顧客としての自己の成果を測定することでこと足ります。個人の成果を測るために、点数化などの指標が使われてきました。これらによる成果の測定は可能です。逆に言えば、個人の成果を測るのに、利益の概念はいりません。

ビジネスで利益基準が圧倒するのは、顧客の数や満足度を総合的に表すのに、定量化できるマネーの尺度が便利だからです。取引が巨大になれば、必然的にそうなります。一方、企画や開発の場合、顧客に焦点を当てて考えることになるのも当然のことです。

     

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