■アップルに関する本で一番のおすすめ:『ジョナサン・アイブ』

      

1 アップルの成功事例

多くの本や記事でアップルの成功事例が取り上げられています。あまりに巨大な組織ですから、そう簡単にまねできるものではないでしょう。しかし知らないうちに、それらを例にして、自分たちのビジネスについて語っていることがあります。

アップルの成功は、それだけインパクトがあるものです。ところが思いのほかアップルに関する本が読まれていません。話をしてみると、短い記事や本で取り上げられている事例を知っているだけのことがあります。これは意外なことでした。

私自身、ごく一部の本しか読んでいません。いくつか読んだ本の中で、これは良いと思ったのはリーアンダー・ケイニーの『ジョナサン・アイブ』です。スティーブ・ジョブズのことも、かえってこの本からのほうが見えてくることがあります。

     

2 手で描くことが基礎

アップルのデザインを手がけた中心人物がジョナサン・アイブでした。「父は腕のいい職人だった」「クリスマス休暇中の誰もいない大学の工房で、一日中僕が思い描いたものを作る手伝いをしてくれるのが父のクリスマスプレゼントだった」と振り返ります(p.27)。

このとき父の[マイクは一つだけ条件を出した。作りたいものを手で描くこと]です(p.27)。[マイクは経験的な教育(製造とテスト)と、直感的なデザイン教育(とりあえずやってみて、その過程で手直しを加えていく)の組み合わせを強く提唱していた](p.28)。

これがアイブの基本姿勢につながっています。さらに[デザイナー以外の人たちにアイデアを伝えること]も[ジョニーにはそれが出来ました](p.31)。ジョニーとはアイブのことです。アイブは自分のデザインのコンセプトをわかる表現にすることが出来ました。

     

3 もっといい製品を作ること

ニュートンというPDAについて[「日常生活の中でどう使ったらいいかわからないことが問題だった」とジョニーは言う。「具体的なストーリーを提示できていなかったんだ」](p.113)。コンセプトとストーリーの両方を表現することを意識していたのです。

[ジョニーは最初のデザインから2週間で模型を作り上げ、周囲を驚かせる](p.115)という仕事の速さも持っていました。アイブは、[スティーブが、僕らの目標は金儲けではなく、偉大な製品を作ることだと宣言した](p.147)ことに共感を持ちます。

ジョブズの方も後年、[僕に精神的なパートナーがいるとしたら、それはジョニーだな]と語ることになりました。クリエイティブな面での共感です。ジョブズは後継CEOにはティム・クックを選びました。[クックは電車を時間通りに走らせる]からです(p.369)。

巨大になった組織をドライブするのはクックでしょう。しかし倒産の危機にあった会社を再生させるとき、ジョブズはお金儲けに焦点を当てずに、『もっといい製品を作るんだ』と考えました。アイブは共感をもって語っています(p.370)。読む価値のある本です。

   

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