■悲観的予測にもかかわらず中国に投資した理由:安達誠司『中国経済はどこまで崩壊するのか』から

     

1 中国経済のバブル崩壊

安達誠司『中国経済はどこまで崩壊するのか』は、2016年に書かれた本です。いまから読むほうが、興味深いかもしれません。以前に読んだ時、あれれと思うところのある本でした。しかし世の中の一般的な考え方がどうであったのか、かつてを知るのによい本です。

安達は2020年に日銀の政策委員になります。優秀なエコノミストでした。実際、分析はけして的外れではありません。中国経済は[高度成長の局面をすでに終え、低成長局面に移行する過渡期](p.67)とのコンセンサスを前提にして、バブル崩壊にも言及します。

中国バブルが崩壊しても[その影響はそれほど大きくない]でしょう。日本が[世界全体のGDPの三割近くを占め][内需主導の経済成長への転換を果たし][輸入額が大幅に伸び]た後、バブル崩壊しましたが、世界経済には軽微な影響のみでした(pp..22-23)。

      

2 変動相場制への移行に追い込まれる?

中国では[大きな損失を出して不良債権の処理を行うべきところで、処理を先送りしたいがため、追加融資(いわゆる追い貸し)をしている可能性がある](p.24)と安達は記します。さらに[固定投資(設備投資や公共投資)のウェイトが高い点は問題](p.p.25)です。

[今後、中国で資本ストック調整が起きれば、中国の実質GDP成長率は大きく低下](p.72)するでしょう。こうした分析は、当時も今もそんなに少数派ではありません。いまみても適切な分析だったと言ってよいでしょう。しかし、この先がおかしいのです。

安達は言います。[人民元が現在の固定相場制(「ターゲットゾーン制」)から変動相場制への移行に追い込まれる可能性が高いと考えている](p.78)とのことです。その結果、中国経済は発展すると考えていました。当時そう信じる人が少数ではありませんでした。

     

3 ありえない想定に基づいた投資

安達はこの本を書く際、小室直樹の『ソビエト帝国の最期』と『中国原論』を参考にしています。しかし、出された結論は、小室の言うことと矛盾してます。変動相場制を[政治的に中国共産党政権がそれを許容できるかどうか](p.78)、明らかでしょう。

逆に言えば、このままいけばバブル崩壊は間違いなく、経済の構造転換も進まないと予測されたにもかかわらず、資金供給が止まらなかったのは、なぜか。安達などが想定していた変動相場制への移行という、ありえない想定があったからだろうと思います。

▼変動相場制へ移行して、経済政策を含め、経済活動の自由度をより高めることによって、一人当たりGDPで二万ドル超の「高所得国」への道が開けるのではないかと考えているのだ。 p.78

いままで何人かの方から、中国への投資が減らないのが不思議だというのを聞いたことがあります。2023年には、もはやありえない予測をする人が例外になったようです。中国への直接投資が8割を超える減少になりました。今後どうなるのか、注目されます。

     

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