■ビジネスで大切なのは演繹よりも帰納的なアプローチ:業務の記述が基礎
1 演繹的なアプローチは特別な方法
ある理論をそのまま受け入れて、ビジネスを行うというのは、高度なことです。星野リゾートでは、ビジネス書の言う通りに経営するというお話も聞きましたが、特別な事例だと思います。こうした演繹的なアプローチは、標準的な方法だとは思いません。
一般的には、現実を記述することから始めるべきだと思います。業務を記述するということです。現在の業務実体を、そのまま書いていくことから始めるべきでしょう。記述することによって、改善点が見えてきます。記述するだけで成果が上がるのです。
業務を記述するということは、業務を「見える化」するということになります。業務を遂行しているだけでは、業務を客観化できません。業務の記述によって、客観的に業務が見えてきます。当然、現実の業務実体が完璧な仕組みになっているはずはありません。
2 業務を記述して改善点を見出すこと
業務が記述できるのなら、まず100%改善につながります。こういっても、嘘にはなりません。書きながら、次々こうしたほうがよいというアイデアが出てくるのを、何度も見てきました。実際の業務を正確に記述していくことは、実力養成にもなります。
そこから改善点を見出すうちに、効果的な仕組みがどんなものであるかが、わかってくるはずです。現在行われている業務の仕組みが叩き台になって、よりよい仕組みに作り替えていくことが出来ます。新しい仕組みを説明する場合に、記述が不可欠です。
業務というものは、実践する限りにおいてはダイナミックに動いています。それを記述してみると、業務の静的な仕組みが見えてくるのです。動いていたものが止まって見えるならば、気がつくことが出てくるでしょう。それが記述の効果です。
3 業務マニュアル作成による業務改革の方法
自分で気がついたものは、個々の断片にしかすぎませんが、その断片の部分を変更していくことが改善ということになります。部分の改変が効率化につながるかどうか、その場である程度はわかるでしょう。それを実践して、実際の成果を見ていく必要があります。
記述の段階での改善案が、実際の成果を生むようになると、だんだん改善の仕方というか、コツがわかってくるはずです。それだけでなくて、改善を進めていく先に、新しいモデルまで見えてくるかもしれません。これが帰納的なアプローチの効果です。
現実を見て、具体的な部分を改善していき、今度は新しい仕組みが作られていくということになります。新たな仕組みを定着させるためには、どういう風にしたらよいのかを書いておかなくてはなりません。ここでも記述が基礎にあります。
記述によって新しい仕組みを作り上げるというのは、いわばプロトタイプを作成した段階です。実践しての検証により、新しい仕組みの採用の可否が決まります。成果が上がって快適になるなら成功です。これが業務マニュアルによる業務改革の方法になります。