■ドラッカーの代表作『産業人の未来』

    

1 ドラッカーの代表作は何か?

ピーター・ドラッカーの本で一番だと思う1冊を選ぶとしたら、どうなるでしょうか。何となくですが、『現代の経営』が一番落ち着きがいいような気がします。一番売れたのは『経営者の条件』だったと聞いたことがあります。人気で言えばこの本でしょう。

その他に『マネジメント』を代表作だとする人もいるかもしれません。だいたいこの3冊が一般的でしょう。しかし『産業人の未来』によせた1995年の序文でドラッカーは、[識者と友人の多くが、本書を私の最も優れた著作としている]と記しています。

この本の訳者である上田惇生も[ドラッカーの著作の中でも、最も面白く、最も知的興奮を覚えさせられるもの]とドラッカー選書のあとがきに書いていました。いま、1冊だけ読めると言われたら、私も『産業人の未来』を選ぶだろうと思います。

     

2 「失業は経済的な救済では癒されない」

ドラッカー好きだと言われる人でも、あまりこの本を読んだ人はいません。しかしこの本のあちこちに活きた洞察が記されています。たとえば[近代産業における最大のイノベーション]は何でしょうか。人間を機械と見なしたことだったと考えるのです(p.87)。

その後の[大量生産工場における機械化や自動化]によって起こったことは、[かつての肉体労働者がいなくなり、職長が残った]ということになります(p.89)。これが[長期の大量失業]をもたらして[深刻な社会崩壊の兆し]になりました(pp..90-91)。

なぜなら[失業は経済的な救済では癒されない]からです。[初めは腹をたて]、まもなく[途方に暮れ]、ついには[無感覚に陥る]、これが1920年代からの[この20年間における失業問題]における深刻な問題でした(p.91)。現代にもつながる問題です。

     

3 「自由とは楽しいものではない」

ドラッカーは自由について、[自由とは楽しいものではない]と言い、[自由の本質は別のところにある]と記します。[自由とは、責任を伴う選択]ですから[一人ひとりの人間にとって重い負担]になるということです(p.125)。その自覚が必要になります。

なぜなら[自由こそは人間にとってあるべき姿である]からです。そうなると、人間とはどういう存在だと考えるべきでしょうか。[人間は基本的に不完全で儚いもの]と考えるしかありません。人間が完全無欠だとしたならば、自由は否定されることになります。

[完全無欠な者は絶対真理を有する]のですから、少数の人間が完全無欠だとされたなら、[自由は不可能となる]でしょう(p.127)。それゆえドラッカーは、[自由とは、人間自らの弱みに由来する強みである]と言うのです(p.130)。

『産業人の未来』は1942年に出版されています。1995年版のはしがきによれば、[アメリカが参戦する前にほとんど書きあげていた]本でした。上田はあとがきで[産業社会のあるべき姿を論じた]名著としています。読むべき本であることは間違いありません。

      

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