■イノベーションについて:体系化の試み

    

1 新しい組み合わせを生み出すこと

イノベーションについてのラフスケッチを3回書きました。振り返りをしておきたいと思います。イノベーション理論の一番の基礎になるのは、シュンペーターの『経済発展の理論』第二章「経済発展の根本現象」と言われているのはご存じのとおりです。

この基礎理論は、概説書にシンプルにまとめられています。それで十分でしょう。それよりも、理論を自分たちに引き寄せて、実践的に発展させることの方が大切です。そのヒントが、ドラッカー「未知なるものをいかにして体系化するか」にあると思いました。

イノベーションの一番の基盤となるのは、ヤングの『アイデアのつくり方』にあるアイデアの定義「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ」でしょう。このとき「既存の要素」から、いかにして「新しい組み合わせ」を生み出すかが問題になります。

      

2 世界の秩序を見出す知覚が不可欠

[未知なるものの体系化に基づくイノベーション](p.8:『テクノロジストの条件』)
のアプローチを、プロデュースの10段階(『夢を実現する力』p.21)で再構築すると、[1]目的を明確化し、[2]コンセプトを確立し、[3]ストーリーにする…になります。

秩序は[全体の目的に沿った配置]になるというのがドラッカーの考えでした。体系の構築には目的が必要であり、達成のカギになるのがコンセプトです。コンセプトが[成長、発展、リズム、生成]を内包する(p.8)ため、ストーリーで語られることになります。

では、どこに目をつけたらよいのでしょうか。目的の前提になるのは、顧客の創造です。このとき何によって顧客を創造するのかの絞り込みが必要になります。ドラッカーは、分析に先立って、世界の秩序を見出す知覚が必要だと書いていました。

       

3 行動可能なものを引き出す

「新しい組み合わせ」を見出すには、世界の秩序つまり[全体の目的に沿った配置]を知覚することが必要になります。知覚とは「身体が行動に必要なもの、行動にとって可能なものを世界から引き出してくること」というのがベルグソン=前田秀樹の定義でした。

世界の秩序を見出して、そこから自分の行動可能なものを引き出すということです。この行動可能なものを実現することが目的になります。そして目的を実現するための鍵になる考えがコンセプトということです。ここからストーリーが出来上がってきます。

沖縄返還の際、当時の首相から沖縄の人口を減らさないようにと言われた堺屋太一は、この目的を達成するために、沖縄に産業が必要だと考え、「海洋リゾート沖縄」というコンセプトを生み出しました。ここから観光客を10年で10倍にするという目標が生まれます。

堺屋は、沖縄の潜在的な強みを見出しました。沖縄の人口は増え、目標も達成されたのです。「新しい組み合わせ」を得られるように知覚を働かせ、それを目的・コンセプト・ストーリーの体系に構築すること、これらを実践を通じて検証していきたいと思います。

       

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