■イノベーションについて:前回からの続き
4 目的論的世界観の構築
『テクノロジストの条件』所収の「未知なるものをいかにして体系化するか」で、ドラッカーが言うのは、もはやモダンの世界観では通用しないということでした。モダンの世界を「デカルト的世界観」「デカルト的な体系」と呼んで、これを否定しています。
モダンの世界は、[全体は部分によって規定される]世界(p.6)であり、「因果律」を核とする体系です。これに代わって[デカルト的ならざるコンセプト]をもった[目的論的世界観]が必要になります。それは[目的律を核とする]体系です(p.7)。
これだけでは、いささかわかりにくいでしょう。しかしマネジメントの基礎となる考え方です。この考えに沿って、[ポストモダンにおける諸体系のコンセプトは、全体を構成する要素(かつての部分)は全体の目的に従って配置される](p.8)と記しています。
5 「プロデュースの10段階法」
マネジメントの基礎とは、成果をあげるには、どう発想すべきか、どういうプロセスが必要となるか、ということです。第一に、何のためにそれを行おうとするのかという目的の明確化が求められます。そこから目的達成のコンセプトが生まれることになるのです。
堺屋太一は「近代的プロデュースでは、プロデュースの10段階法というのが確立されています」と記しています(『夢を実現する力』p.21)。これは、①目的の明確化、②コンセプトを創る、③ストーリーテーリングを基本とした体系です。
目的の実現に向けたコンセプトが必要になります。大阪万博のときには、先進国になった日本を世界に示そうという目的が明確でした。これを実現するために、どうしたらよいのか。「近代工業社会日本」の姿を内外に見せようというコンセプトが生まれたのです。
6 成長・変化・発展の「ストーリー」
コンセプトに従って、どのように全体の秩序を創っていくのかが問題になります。ドラッカーの言うように、[全体を構成する要素(かつての部分)は全体の目的に従って配置される]必要があります。目的がコンセプトを生み、全体の秩序を創り上げていきます。
ドラッカーは、[ポストモダンの世界観は、プロセスの存在を必須の要件とする。あらゆるコンセプトが成長、発展、リズム、生成を内包する](p.8)と記していました。どんなふうに成長・変化・発展していくのか、そのための「ストーリー」が必要になります。
以上は、マネジメントの基礎・基盤です。ドラッカーも[このポストモダンの世界観が世界の現実となった](p.8)と言います。同時に[その形態、目的、プロセスを目にしながら、これらの言葉の真意をいまだ十分には理解していない](p.9)と記していました。
1957年の時点では、まだ早すぎたようです。成長・発展には時間がかかります。ドラッカーは「体系的イノベーションなるコンセプト」(p.14)と言い、その後、『イノベーションと企業家精神』を書きました。しかし中核は1957年の文章にあったように思います。
⇒(この項続きます)