■ビジネス文書が簡単に書けない理由

1 文書作成の目的

文書を作ること、あるいは文章を書くことの目的は、自分の伝えたいことを記述することにあります。もっと絞り込んで言えば、問題を提起し、その結論を示すことです。文書を構成するとき、こうした結論をどこに置くのかということが一番大きな問題になります。

文書を構成するときに、どうすれば自分の伝えたいことに納得してもらえるかが問題です。たとえば、はじめに重要事項を置けと言われることがあります。これは逆ピラミッド型とか、逆三角形型と呼ばれる形式です。この形式ならば、迅速に結論が伝わります。

重要なことを最初に語るようにということです。この重要なパートをリードと呼んでいます。リードで、きっちりしたものが書ければ、ほぼ全体が出来上がったようなものです。何が伝えたいことなのかが明確になれば、ほとんど文章は出来上がることになります。

      

2 文書の形式

文章を書くとき、文書を作るとき、コンテンツを作るとき、これらについて何が大切かと言えば、重要事項をどうまとめるかということになるでしょう。内容をどうするかは各人が考えるべきことですが、しかし形式はある程度決まったものがあります。

重要事件が起きた場合、「いつ・どこで」ということは必須のものです。出来事や経験というものは、「ある時、ある場所」でしか成立しません。したがって、重要な出来事や経験を語る場合、「いつ、どこで、どんな場合」というTPOが必要になります。

一方、結論を述べる場合、問題提起があって、その結論があって、根拠が必要です。ここでは論理が大切な要素になります。根拠がきっちりしたものでないと、説得力を持ちません。逆に言えば、裏づけとなるデータ、情報がきちんとしていれば、問題ないのです。

      

3 ビジネスには正解がない

重要な出来事や、ある問題についての結論が、文章の最重要部分になるのは当然でしょう。しかしビジネスでは、重要な事項であり、ある問題についての自説であるにしても、しばしばTPOの形式や、問題提起・根拠・結論の形式にならない場合があります。

業務には正解がありませんから、明確な根拠がないこともあるのです。なんだかわからないけれども、これがうまくいくということがあります。かくたる根拠がなくても、うまくいくものならば、それで行くという選択が必要になることもあるということです。

すべてが説明できて、「結論はこれ、根拠はこれこれです」というのは、きれいな形式ではあります。しかし実務では、そんなにきれいには行きません。実際にやってみて、その検証の結果が判断基準になり、これでよいと判断するのが決断ということになります。

決断したものは結論ではありますが、しかし、なるべく早く、より改善されたものに変えていくことが求められているのです。こういう場合、どういう形式で書くべきなのか、簡単には決められません。ビジネス文書が簡単でないのは、正解がないからともいえます。