■助詞「と」の機能:「体言と体言」「体言と用言」

    

1 助詞「の」の機能

日本語の助詞の機能を見ていくとき、数式を日本語で表す場合に、どんな言い方をしているのかが参考になります。「2の3倍は6です」は「2×3=6」です。このように助詞「の」には、結合する機能があるというと、ああそうですねと言ってくれます。

ただし、単純な結合というわけではありません。日本語の場合、後ろに重心がありますから、「の」の前後で扱いが違ってきます。「空の雲」と言う場合に、「雲」が主になっていて、雲と結びつく「空の」のほうは従たる要素です。この点、数式と違います。

数式でいえば、「2の3倍は6です」を「3の2倍は6です」とは言えるのです。しかし「3倍の2は6です」という言い方には、違和感を感じることでしょう。「*倍」というのは後ろの言葉が吸収しています。あえて表記すれば、「2(×3)」という感じです。

       

2 助詞「と」の並列する機能

「2と3を足すと5になる」を数式で表すならば、「2+3=5」になります。「3と2を…」とも言い換え可能です。だから助詞「と」が「+」を表しているようにみえます。しかし、「2と3は5だ」とは言えません。そういう言い方は成り立たないのです。

ここは、【「2、3」の両者を「足すと5になる」】ということを表しています。助詞「と」の場合、後ろに重心のある構造にならないのです。「と」の前後で、主従の関係はありません。「の」と違って、「と」は対象を並列する機能があるということです。

「彼と私は友達だ」と言うとき、「彼」と「私」のあいだに重心の違いはありません。「私と彼は友達だ」と言っても、意味が大きく変わらないということです。上記のように、「2と3」を「3と2」に変えた場合でも、大きな違いにはなりませんでした。

       

3 助詞「と」の機能の特徴

それでは助詞「と」に足すというニュアンスはないのでしょうか。ある…はずです。「と」の場合、並列させて、全部でこれだけだと示しています。したがって、「AとBは」と言われれば、AとBを一緒にした概念を示すことになるということです。

「2や3を」ならば、それ以外の数字もあり得ますが、「2と3を」の場合、2・3以外はありえません。「2と3を除いて」の場合でも、両者は一緒になっています。これは「恋しさと せつなさと 心強さと」のように、2つ以上になっても一緒のままなのです。

「と」の場合、「体言+体言」だけでなくて、「体言+用言」でも一緒になります。ただしこの場合、「と」の前後で主従の関係が生じます。「彼はありがとうと言った」という場合、「ありがとう」と「言った」が一緒になりますが、主となるのは「言った」です。

「と」の場合、「の」とは逆に、前の言葉に吸収され、一緒になる相手を探すことになります。「ありがとうと/彼は/言った」の場合、「ありがとうと」で区切れて、一緒になる相手を探すのです。一緒になる相手が用言の場合、飛び石並列が可能になります。

       

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