■若いリーダーに伝わるマネジメントのテキスト:目標とはどんな概念か

      

1 読んでもわからなかったとの訴え

リーダー候補の若者から、どうやって勉強したらよいのかと聞かれました。この話は、少し前にブログにも書いています。この時、おすすめの本としてドラッカーの『経営者に贈る5つの質問』もあげていました。ところが読んだけれども、わからないとのこと。

『経営者に贈る5つの質問』はドラッカーの晩年に作られた簡潔なワークブックです。薄い本ですし、よく読めばわかるだろうと思ったのですが、簡潔すぎて説明不足の点があります。基礎となるマネジメントがわからないと、この本はわかりにくいでしょう。

あまり意識しないで薦めてしまいました。反省するしかありません。あとでテキストを作るからと伝えておきました。そういえばドラッカー自身、自分の本は大学生でも難しい、『エクセレントカンパニー』のような本とは違うと語っていたはずです。

      

2 「目的・目標・手段」の3段階の原則

すでに[ドラッカー『経営者に贈る5つの質問』に対するささやかな注釈](その1・2・3)を書いていました。分量が多いこともさることながら、若者にはこれでは通じないでしょう。もっと基礎的なところがきっちり伝わるように説明する必要があります。

事をなすときに目的・ミッションを決める必要があり、それを具体化し、明確化するのが目標です。それに対して、目標達成のためにどういう仕組みで実行するのか…ということが手段になります。このように目的・目標・手段の3段階で考えていくのが原則です。

この3段階それぞれに判断基準があります。目的を決めるときは良心に従って「主観的」に、目標の設定の場合、定量化をして「客観的」に決めるのです。手段を決めるときには「合理的」かどうかが判断基準になります。さて、どう伝えたらよいでしょうか。

      

3 「目標」の理解がポイント

ミッションの検討には、『経営者に贈る5つの質問』の大病院の救急室の事例が参考になります。「患者の健康」ではなく「患者の安心」がミッションです。このミッションから、[運び込まれた患者を1分以内に診る]という行動の指針が生まれます。

ミッションはこれで検討できるでしょう。一番問題になるのは目標の理解です。客観的な基準を作るには、測定が問題になります。実行の状況を測定して、目標と比較することが目標管理です。(1)測定方法、(2)測定尺度、(3)評価基準が問題になります。

例えば心臓の状態を測定する「エコー検査」と「BNP検査」があります。エコー検査は、(1)超音波で、(2)心臓の動きを目視し、(3)正常な心臓の動きと比較。BNP検査は、(1)血液検査で、(2)心臓から分泌されるホルモン量を測定し、(3)正常値と比較します。

このような測定によって状況が把握できれば、いつまでにどの水準までを狙うかの目標が決まるでしょう。目標を客観的に決めるには、測定が問題になります。これが難しいところです。適切な測定ができる人なら、手段の合理性を判断することは可能でしょう。

       

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