■業務マニュアルとマネジメント
1 業務マニュアルと業績の関係
来週4月26日に業務マニュアルの作成講座があります。10年以上続いている講座です。テキストの直しが終わって、新しいテキストを送りました。今年の講座からは、コロナ後の新たな業務体制の話が大切になります。昨年まで、ご参加の方も苦労していました。
もう10年近く前のことですが、業界でトップを争っている会社のリーダーから、業務マニュアルを作っても業績に変わりがないというお話を聞いたことがあります。業務はすでにできているから、マニュアルがあってもなくても変わらないのですよということでした。
すでに仕事はうまく回っていて、問題がないのでしたら、作成しなくてはいけないものではありません。作成するには労力もかかります。必要不可欠なものではないのです。逆に言えば、必要な場合があるということになります。それはどんな場合でしょうか。
2 属人化のリスク
業務が一定以上複雑化してくると、ある業務に関して組織側が状況を把握できなくなっていることがあります。いわゆる属人化です。その業務に関して、その人に聞かない限りわからない状況になっているのは組織としてリスクがあります。
なぜ、こんな状況になってしまったのでしょうか。たいていの場合、会社側がどんなルールや手順で業務を進めていけばよいのか、事前に決めてなかった場合です。担当者に丸投げをして、担当者がルールや手順を決めていったということになります。
こういう場合、組織側はそうした業務について、その後も確認していないのが普通です。仕事を任せた人に聞くしかありません。その人に、業務マニュアルをいきなり提出するように言おうにも、忙しくて、そんなことやっていられませんということになります。
3 マネジメントの基礎
仕事ができていて問題がないのなら、その間はそれでよいように思えるでしょう。しかし状況が変わって、個人に丸投げできなくなったとき、もはや組織側が黙っているわけにはいきません。現状がどうなっていて、今後はどうするのか考える必要があります。
経営をする側、いわゆるマネジメントをする側が、すくなくとも大枠を示さなくてはなりません。業務を把握していないと、簡単にはいかないでしょう。組織側が業務の実態を把握していないと、組織の維持・発展に制約が生じるということです。
業務マニュアルがなくても業績に関係ないかどうかは、業務の把握にかかってきます。リーダーが業務を把握していて、それを記述していないということでしたら、ひとまず問題はありません。ただし、それを記述するのは楽ではないでしょう。
業務を把握していたはずの人が、引き継ぎなどで業務の説明をしようとすると、意外に詰めていない仕事があることに気づくのです。業務を把握することがマネジメントの基礎になります。業務マニュアルがあるなら、その基礎ができていることになるでしょう。