■西堀栄三郎から学ぶために:『ものづくり道』の「現場にあるアイデア」

  

1 西堀の代表作2冊

西堀栄三郎のことを知らないリーダーがいたとしても、もはや驚いてはいられません。時代は流れていきますから、仕方のないことでしょう。しかしこの人から学ぶことは有益なことだと信じます。西堀には著作がありますから、学ぶことは可能なはずです。

中核になる本は2冊、『石橋を叩けば渡れない』と『ものづくり道』(『創造力』)だと思います。前著が代表作だと言ってもよいでしょう。講演録をもとにして、上手にまとめられています。西堀から学ぼうとする場合、この本に加えて『ものづくり道』も必要です。

今回、西堀を知る人でも意外に読んでいない『ものづくり道』をご紹介したいと思いました。この本には2本柱があります。先にご紹介した「オリジナリティのつくり方」と、もう一つが「現場にあるアイデア」です。この2つの章は必読と言えます。

    

2 現場主義「事実からの出発」

「現場にあるアイデア」の内容を簡単にご紹介しておきましょう。これは簡単です。どんなことを記しているのか、この章の最初に置かれた「事実からの出発」の見出しを見るだけでも、おわかりになることでしょう。以下をご覧ください。

・現場は理屈通りにはいかない
・種は現場にあった-真空管の品質改善
・知識を技術に応用する-ゲッターの発明
・理論は「線」、現実は「点」
・アメリカからQCを学ぶ
・誰でもわかる統計的品質管理を

日本企業の強さとして、いわゆる現場主義が言われました。西堀は、まさに現場主義の人でした。現場での現実、現物に基づいて、実践がなされます。実践するだけでなく、その客観的な測定をし、それを目標と比較して評価していったのです。

     

3 観察法の事例

西堀は「私の観察法-ベンベルグ革命」で、[実際に「観察法」でやり、この方法がいかに有効かということをいちばんよく実証している旭化成ベンベルグ工場での実験について紹介してみたい](p.235)と記しています。以下のような事例です。

(1) ベンベルグの生産で糸がかたくなる不良品が大量に発生
(2) 西堀は日付ごとに、かたい糸の発生高のグラフを作らせる
(3) 降雨量がグラフの形と類似していることに気づく
(4) 社内データを徹底的に分析して不良率変化のグラフと類似のデータを発見
⇒ 工業用水の貯水池の水位の上下と関係があることを探り当てた
(5) 用水にふくまれる物質が原因だ(雨で物質が薄まるのでは)と考えた
⇒ 珪酸イオンが減少すると、かたい糸ができるという事実を発見
(6) 珪酸イオンを増やすと、やわらかいベンベルグ糸ができる
⇒ 西堀の技術指導により、延岡工場は世界的なべンベルグ工場になった

この人工繊維に関しても、製鉄所に関しても、成果の大きさには驚くべきものがあります。いうまでもなく、簡単に習得できるものではありません。しかしこちら側がその気になれば、自分なりの方法で学ぶことができます。学ばない手はありません。

     

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