■「補足語」という文法用語:筋道の立てかた

     

1 筋道の立てかたを学ぶこと

小西甚一が『古文の読解』で「太っ腹文法」という言い方をしています。文法では[筋道の立てかたを学んでいただきたい]、[術語の不統一]を気にしすぎないようにということでした。[筋さえ通っていれば、どんな説でもOK]なのです(以上、p.195)。

小西は具体例をあげます。「主語・客語などを補い」とあったら、[補うのは「主語・客語」だけでなく、その他にもあるはず。それなら、何もかまうことはない。フルに補ってゆけば、その中には、しぜん「客語」もはいってくるにちがいない](p.197)のです。

もはやは使われない「客語」という用語でも、問題なく処理できるではないかというのでした。大切なのは「筋道の立てかた」です。これが大切なポイントです。しかし実際のところ、文法では用語が重視されています。そして用語が必ずしも統一されていません。

     

2 漢文での「補足語」

通説的な日本語文法の本に「補足語」とありました。先日、日本企業で働く日本語堪能な元留学生の人から、独自の「補足語」の定義を教えてもらいました。当然、教科書とは違ったものです。しかし文章を理解するときの筋道を独自で持っているのを感じました。

昭和28年出版の西田太一郎『漢文法要説』にも「補足語」という用語が出てきます。まさに「太っ腹文法」という感じの使い方です。[補足語というのはきわめて広範囲のもの](p.9)であり、「主語+述語」と対比される別系統のものとして使われています。

▼「何をどうする」「何にどうである」「何にどうする」「何となる」「何という」その他これに類するものは「述語+補足語」の形式をとる。 p.9 『漢文法要説』

[英語でいうobject,complement,objective complementは無論][at on in to fromなど
の前置詞をもつ語(adverbial adjunct)、及びadverbial objectiveをも含む](pp..9-10)とあります。文の基本形式の中で、「主語+述語」ではないものというニュアンスです。

      

3 主体とそれ以外の重要要素

英語と漢文と日本語とでは当然、文の構造に違いがあります。西田の『漢文法要説』では、その違いを前提にして、叙述されたものに対して、それが主体なのか、主体でないものなのかを区分しているのです。それを分けることに意味があるということになります。

西田のいう「補足語」は、英語5文型の「目的語+補語」より広い領域を表しているものです。この点は間違いありませんが、西田は補足語の厳密な定義をしていません。文を構成する重要な要素の中で、主体ではないものの総称とでもいうべき概念です。

日本語にも主体とそれ以外の言葉があるのは確かです。主体を記述しない場合でも、主体の存在は見出せます。日本語の読み書きを考える場合、主体を意識しないのは自然な筋道の立てかたではありません。主体概念を抜きにする通説的見解には違和感があるのです。

      

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