■ジャック・ウェルチの「戦略のための5つの質問」

      

1 大きな会社でも小さな会社でも使える戦略

ドラッカーの『経営者に贈る5つの質問』はご存知の方が多いと思います。①ミッションは何か、②顧客は誰か、③顧客にとっての価値は何か、④自分たちにとっての成果は何か、⑤自分たちの計画は何か。これら5つの質問を順番に考えていく手法です。

これとは違う5つの質問があります。ジャック・ウェルチの5つの質問です。『ジャック・ウェルチの「私なら、こうする!」』にあります。「大きな会社でも小さな会社でも使える戦略」という項目で示されたものでした。戦略を導く質問です。

①競争する市場はどんな状況か?
②最近、競争相手は何をしているのか?
③私たちは最近、何をしたのか?
④夜眠れなくなるような出来事あるいは起こりそうな変化があるとすれば何だろうか?
⑤それらのことをすべて勘案して、私たちは勝つためにどう行動すればいいのか?

ずいぶんドラッカーのものと違っています。ウェルチの方が、実践的な質問であるとも言えるでしょう。戦略を考えるときに競争を前提にするため、市場の状況を問うことから始まっています。ここには「顧客は誰か」ということも含まれると考えるべきでしょう。

      

2 戦略とはどういうものか

競争する市場が発展する市場であるのか、そこの顧客は誰なのか。これが最初の質問です。つづいて競争相手を問い、自分たちが何をしたかを問うています。最初の3つは「市場(customer)」「競合(competitor)」「自社(company)」の3Cを問うているようです。

こうした質問に続けて、今後の変化を問うています。変化を検討した上で、行動計画を立てなくてはいけません。この5つの質問は静態的な発想ではなく、3Cよりも動態的な発想です。当然のようにウェルチは言います。[戦略は流動的でなくてはならない]。

ではウェルチにとって、戦略とはどういうものでしょうか。[戦略とは、顧客がよその会社のものよりも欲しいと思うような商品やサービスをつくり出す、勝つための価値をつくり出すものでしかない]ということになります。当然のように、競争が前提です。

      

3 付加価値を生み出す提案

ウェルチの5つの質問には「どえらいアイデア」が必要だという前提条件があります。それがあれば[持続可能な競争優位性を得ることができる]のです。しかし大きな会社なら、アイデアが失敗しても何とかなりますが、小さな会社はつぶれる危険性があります。

したがって[小さな企業では、高付加価値を生み出すような提案をしていくことが重要となる]のです。ここでいう「高付加価値を生み出すような提案」とは、[他社に乗り換えないように顧客をぴったりくっつけて離さない力をもったもの]です。

たとえば[特許を取得しているアイデア、革新的なテクノロジー、極端に低い生産コスト、他にはないサービスなど]が該当します。ウェルチはこうした前提に立って、最後に、勝つためにどう行動すればよいかを問い、[あとは、実践あるのみ]というのです。

     

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