■顧客の概念:ドラッカー『経営者に贈る5つの質問』と『非営利組織の成果重視マネジメント』

1 「人と社会をよりよいモノにするために」

組織には使命・ミッションが必要不可欠である。その使命・ミッションが組織の目的であるとするならば、どんな内容になるのか。『非営利組織の成果重視マネジメント』に、[変化を起こすことが使命、すなわち組織の最終目的](p.10)だとある。

変化とはどんな変化のことだろうか。この本でドラッカーは、[「生活の改善」が常に出発点であり、到達点である](p.10)と言っている。非営利組織がなすべきこと、存在理由と言えるのは、現状を変えて、生活を改善させることだということになる。

こうした考えは『経営者に贈る5つの質問』にも引き継がれている。[組織はすべて、人と社会をよりよいモノにするために存在する]という記述になった。「組織はすべて」とある。当然、非営利組織だけでなく営利組織にも適応されるということである。

 

2 組織の目的と「顧客の創造」

全ての組織は、「生活の改善」をすること「人と社会をよりよいモノにする」ために存在するというのが、ドラッカーの主張であった。言い方を変えれば、組織の目的は「人と社会をよりよいモノにする」ことだ…ということになる。これで何が問題だというのか?

非営利組織の評価手法として検討を始めたのが1990年だった。『経営者に贈る5つの質問』の最初の版は、2008年に出されている。ドラッカーは2005年に亡くなっているから、『経営者に贈る5つの質問』にあるドラッカーの文章は、最晩年のものである。

非営利組織の視点から組織の目的を考えていくと、すべての組織に該当することがみえてきたのである。晩年のドラッカーの到達点であろう。そうなると、1954年『現代の経営』で、企業の唯一の目的を「顧客の創造」であるとしたこととの関係が問題になる。

晩年に到達した考えは、「人と社会をよりよいモノにする」ことが組織の目的であるということであった。では「顧客の創造」は、どういう概念なのか。金森久雄は「役割」という言い方をした。「顧客の創造」とは、目的というよりも役割・機能ではないのか。

 

3 マネジメントの目的

「顧客」という概念は、従来、非営利組織では使われてこなかった。ドラッカーが『現代の経営』で「顧客の創造」と書いた時、顧客は企業という営利組織のものだった。その時点では、非営利組織に顧客は存在しないという前提に立っていたのである。

晩年のドラッカーは、非営利組織に顧客が存在するという考えをもっていた。『非営利組織の成果重視マネジメント』では、[非営利組織には2種類の顧客がいる]とある。『経営者に贈る5つの質問』では、[組織には二種類の顧客がいる]になっている。

ドラッカーは「顧客」を再定義した。[「組織の活動と、その提供するものに価値を見出す人たち」という意味での顧客](p.47)という言い方をしている。従来よりも、顧客の概念が広くなった。そのため[顧客の創造]の意味も変わることになる。

この意味での「顧客の創造」は、もはや「企業の目的」とは言えない。組織の機能というべき概念に変っている。「組織の活動と、その提供するものに価値を見出す人たち」を創造することとは、組織の機能であり、あるいはマネジメントの目的というべきである。