■マネジメントを学ぶ理由:澤田秀雄『変な経営論』を参考に
1 マネジメントの理解が必要な理由
リーダーはマネジメントの理解が必要になると言われる。なぜなのか。まず指針があれば、考えるときに安定した判断ができるということが大切な機能であろう。さらにマネジメントの視点で考えるなら、事例の評価が客観的にできるようになるという点もある。
たいていの人が、習慣のように同じことを繰り返し、その繰り返し自体が判断基準になりがちである。今までと同じか、違うかということで、大きく対応が変わる。前例と違った場合に、しばしば大きな抵抗が起こることはご存知のことだろう。
物事がうまく進んでいる場合、現状肯定に傾く傾向がある。これは誰しもそうなりがちなところをもっている。それがリスクになりかねない。たまたま偶然に成功した場合と、成功した方法が、様々に使える場合とでは、大きな違いがある。
2 真似ができる体系
澤田秀雄のインタビューによる『変な経営論』を読むと、一流の経営者とそうでない人の違いはどうにもならないのか…という気がしてくる。マネジメントの理解がどうこう言うよりも、もともと持った気質と言うのものがあるのかもしれない。そんな気がする。
ドラッカーがインタビューで言った。[『現代の経営』によって、読者は経営管理の仕方を学んだ。それまでは、特に才能のある者だけが行うことができ、他の者には真似のできなかったことを学べるようになった](p.13:『マネジメント・フロンティア』)。
同じく『イノベーションと企業家精神』でイノベーションの方法を示したと主張したときに、インタビュアーがそれはすでになされてきたことではないかと指摘していた。そのときのドラッカーの答えが、まさにマネジメントを学ぶ理由にもなっている。
▼皆が、それらのことは天才だけができることであって、真似できないことと考えていた。しかし、理解できないために真似ができないというのでは、考え出されたものとは言えない。それは単に行われていたというにすぎない。 p.13:『マネジメント・フロンティア』
3 先行事例に学んだ「光の祭典」
単に行われていただけではなくて、理解できて、まねできるようになっていなくてはならない。すぐれた経営者なら、自分で全てを考えようとはしないことだろう。いい意見を見出して、採用することになる。その目利きは、マネジメントの理解の仕方と同じである。
冬場のお客さんの数が少なくなるハウステンボスで人を呼ぶためにどうしたらよいのか。澤田は調査して、「暗くて寒いから」という声が多いことを知る。ならばと[光の祭典」というライトアップイベントを考えた。リヨンでの成功例を聞いていたのである。
▼早速、リヨンへ視察に行くと、あまりの美しさに感動した。「うちでもやろう」と即断した。
じつはビジネスにおいて、先行事例に学ぶことも非常に重要なのだ。もしすべてを自分で考え出そうとしていたら、10年かかったかもしれない。 p.39:『変な経営論』
ハウステンボスは、それまで一度も黒字になったことがなかったという。それをなぜ澤田は引き受けたのか。この条件なら大丈夫だろうと判断できたのは、大きな構想ができていたからであった。マネジメントの理解があれば、その筋道を後追いできることだろう。