■マニュアル総論 その1:業務マニュアル・操作マニュアル・OJT教育用マニュアルの違い
1 業務マニュアルと操作マニュアルの違い
現在、3つの種類のマニュアルの講義をしています。業務マニュアル、操作マニュアル、OJT・教育用マニュアルの3つです。3つ目のOJT・教育用マニュアルというのはほとんど知られていません。しかし実際のところ、いま一番必要性の高いマニュアルです。
講義や研修でまず、業務マニュアルと操作マニュアルの違いを聞いてみると、よくわからないという答えが多く出ます。業務のマニュアルと操作のマニュアルだということは間違いありません。2つのマニュアルの違いは、たしかに業務と操作の違いといえます。
2つのマニュアルの違いを聞くのは、業務と操作の違いを一言で言うと、どうなりますかという質問をしているのと同じことです。両者の性格の違いを意識してマニュアルを作る必要があります。こうした点を考えずにマニュアルを作るのはよくありません。
2 「正解」があるか、ないか
業務に正解などありません。だから企業ごとで違いますし、そのときどきで変わります。状況が変ったら、迅速にルールを変更しなくてはならないでしょう。したがって、業務マニュアルは改定を前提に記す必要があります。ビジネスは、変わり続けるからです。
操作には正解があります。こうしなくては、こうならないという決まりがきっちりあります。この機能を利用するのであれば、こうしてくださいというルールを示すのが操作マニュアルです。ゴールがあって、そこにたどりつくプロセスが決まっています。
使いたい機能と、そこに到達するために、どういう操作をすればよいのかを説明するのが操作マニュアルです。正解は1つとは限りません。操作方法に何種類かが用意されていることはよくあります。どちらでもよい場合、どちらかに決めるべき場合があるでしょう。
業務には正解がありませんから、創造的な領域が大きくなります。現状を記すだけでは、よい業務マニュアルにはなりません。ビジネスが変化していくときに、その原則というべきルールを見出して、それを仕組みになるように整備していく作業だと言えます。
3 OJT・教育用マニュアルとは
OJT・教育用マニュアルというのは、業務マニュアルや操作マニュアルとまた別の種類のマニュアルです。OJT・教育用マニュアルというのは、業務マニュアルや操作マニュアルと何が違うのでしょうか。まだ違いを聞くほど、世の中に認知されていません。
OJTや教育研修を行うときに、指導する側が、どう教えていくのかの指針を書いたものが、OJT・教育用マニュアルです。すでに、かなり多くの組織で使われています。効果も高いものです。しかし成功している当事者の方は、あまりその存在を主張しません。
マニュアルに従って業務をしていると言う場合、それはマニュアルの内容を習得して業務をしているというのが普通です。こうした場合であっても、各人が使う業務マニュアルが用意されていて、それを各自が参照しながら仕事をしているわけではないでしょう。
取り組むべき仕事があった場合、まだ仕事のやり方を習得していない人は、研修を行って、仕事のやり方を覚える必要があります。その際、資料が配られることもあるはずですが、中心となるのは研修での指導です。成果も、どう教えるかに関わってきます。
OJTや教育研修をするときに、指導者が教えるときに、ガイドとするのが、OJT・教育用マニュアルです。個人任せで済ませていられるのは単純な作業にすぎません。指導によって成果に大きな差が出てきます。それでマニュアルが必要になっているのです。
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