■読み書きのために 3:活用する言葉と活用しない言葉

 

1 「文末は終止形」の原則

言葉を分類するときにイ系・ウ系という言い方をしました。イ系とは形容詞、ウ系とは動詞のことです。形容詞と動詞の分類はそのままがよいと思います。名詞や形容動詞の概念に賛成できなくてガ系・ノ系・ナ系に3分類したため、それに合わせた仮の名称です。

終止形の語尾が「い」になるのが形容詞、終止形の語尾が「う段」になるのが動詞です。形容詞も動詞も活用のある言葉であり、終止形が基準になっています。私たちは終止形であるかどうかが感覚的にわかります。繰り返しの中で刷り込まれているようです。

ここから文末の原則が見えてくると思います。「桜が美しい」なら「美しい」という終止形が文の終わりの目印です。文末に終止形を置けば文が終わる感じになります。逆に「美しいです」のように、終止形に「です」をつけると余分に感じることがあるでしょう。

 

2 ナ系の言葉の特徴

活用する言葉の場合、語形を変化させて終止形を作ることができます。終止形が文の終わりの目印になりますから、終止形を文末に置くのは自然です。活用しない言葉の場合、語形が変化しませんから終止形という形式はありません。文末の言葉を接続させます。

形容詞も動詞も活用する言葉ですから終止形があります。文末に終止形を置けば文の終わりと感じます。一般に形容動詞にも活用があると言われていますが、しっくりきません。終止形と言われる形式は、「です・だ・である」を接続する形にすぎないでしょう。

形容動詞の概念そのものに疑問があるのです。ナ系という名前で呼ぶ言葉は、形容動詞の概念とは違うということです。ナ系の言葉には、外来語の「ソフト/キュート」なども含めて考えますから、この点からも活用しない言葉であるという点が補強されます。

「きれい/静か/幸せ/ソフト/キュート」などがナ系の言葉であり、文末では「です・だ・である」を接続させるのが原則です。「バラがきれい」という文はどこか落ちつきません。「バラがきれいです」「バラがきれいだった」のほうが自然だということです。

「ソフト/キュート」などの外来語からもナ系の言葉の性格が見えてきます。もとの英語「soft/cute」は形容詞でした。日本語になった「ソフト/キュート」もキーワードを修飾(=限定)する点で形容詞的です。修飾の役割を担うときに「な」が接続されます。

 

3 ノ形容名詞・ナ形容名詞

ナ系の言葉と類似の言葉にノ系があります。「満開」「究極」「最高」など、活用形を持たない言葉です。「満開の桜」のように「の」を接続させてキーワードを修飾する役割を担います。ナ系と同様にキーワードを修飾する形容詞的な言葉といえるでしょう。

両者は、①活用がなく、②キーワードを修飾する役割を持ち、③文末では「です・だ・である」接続になるという点で同類です。修飾するときの接続形式がナ系で「-なA」、ノ系で「-のA」と違うのは、それぞれの言葉が示す意味内容に違いがあるためでしょう。

ナ系もノ系も、どんな状態にあるかを示す点では同類です。しかし両者が示す状態の類型には違いがあります。ナ系はどんな「様子」であるかを示し、ノ系はどの「程度」なのかを示すのです。それぞれ「様子」と「程度」の類型を示すことで状態を表すのです。

「きれい/幸せ」ならば「きれいな風景/幸せな生活」というように「様子」を示すことで、「風景/生活」を修飾(つまり限定)しています。「満開/究極」ならば「満開の桜/究極の味」のように「程度」を示すことで、「桜/味」を修飾・限定するのです。

ガ系はキーワードになれる言葉、ノ系・ナ系はキーワードを修飾する言葉です。3種類の言葉は活用せず、文末でも同じ接続形式をとります。ガ系を名詞と呼び、ノ系・ナ系を「形容名詞(ノ形容名詞・ナ形容名詞)」と呼ぶのがふさわしいのかもしれません。

 

 

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