■ビジネス文書とコラム:構造の違い

 

1 内容で感動させられるか

ビジネス文書の構造の話を2回にわたって書きました。変に力が入っていて、かえってわかりにくかったという声がありました([1]/[2])。すこし違う角度から書いてみます。ビジネス文書というと無味乾燥だと思われがちですが、感動させることも可能です。

素晴らしいコンセプトがいいタイミングで示されたなら、それに賛同して感動をもって仕事を進めることもあり得ます。人の心に伝わるものの実質は、仕事の内容そのものです。内容の実質で勝負し、それを早く伝えるという意味でスピードの勝負でもあります。

すばらしいビジネスモデルを考えついたり、すばらしい製品コンセプトを提示したりするときに、文章で表現することが大切です。図解だけではダメです。文章の場合、文字だけに情報が集中していますからブレにくいのです。そこが原点となり、指針となります。

 

2 コラムの構造:「編集手帳」の場合

こうしたビジネス文からすると、コラムはまったく別の機能を持った文章だと言えます。どう違うのでしょうか。「心を動かす名文はこうして生まれる」と帯にうたった『「編集手帳」の文章術』で竹内政明はコラムの構造を説明しています。

「編集手帳」は「マクラ」「アンコ」「サゲ」から構成されているとのこと。3つの部分を書くときに、[まず、マクラを書く。次に、真ん中を飛ばしてサゲげを書く。最後にアンコに取りかかるのが私の執筆手順です]と言います。なぜこの順番なのでしょうか。

(1) マクラには本題と関係なく興味を引く魅力的な雑学、エピソードなどがよい。
(2) アンコは本題の概要を伝える部分。簡潔を旨とする。
(3) サゲはホッとしたり、しみじみして緊張から解き放つもの余韻を与えるものがよい。

この内容を見れば鍵がどこにあるかわかるでしょう。[読者の読後感を作り出すのはサゲであり、尻切れトンボに終わればコラム全体が台無しになります。サゲは削れません。存分に字数を費やして書き、削るべきはアンコで削るのが「編集手帳」の流儀です]。

 

3 冒頭に置かれるビジネス文書の重点

コラムの場合、ある気分を作り出して、余韻を与えることによって心を動かすということになります。文学の機能と類似のところがあるのでしょう。その点、ビジネス文書はカラリとしています。余韻などなしに明確に正確に結論と概要を示すことを旨とします。

コラムでは、読んだあとの余韻を大切にするために、最後に重点が置かれます。記述の鍵は最後の「サゲ」にあるということでした。概要を伝える「アンコ」は、必要最小限の文字数・情報量で背景説明をすれば足ります。十分な説明は不要です。

コラムとビジネス文書では、重点の位置が違います。ビジネス文書の場合、最初に重点が置かれます。結論と概要を示すことで文書全体の判断材料を提示するのです。そこで内容の一次審査がなされます。最初の部分がダメならば、文書全体が台無しになります。

冒頭の結論部分が審査で却下にならなかったら、結論から枝分かれしたポイント解説の部分に進み、二次審査がなされます。最後に意義や展望などのまとめが確認され、文書全体の評価が決まります。これが逆ピラミッドの構造です。コラムとは構造が違います。