■業務を記述すること:業務コンサルタントの仕事
1 記述が思考を「見える化」する
先日PMAJ例会で90分の講義を行って来ました。業務コンサルタントという仕事はなじみのないものだろうと思います。業務を記述することによって業務を整理し、業務改革を促すお手伝いをする仕事です。なぜ記述することが業務改革につながるのでしょうか。
記述することは思考を「見える化」することになります。業務を見えるようにするためにも、それを記述する必要があります。業務に従事する人なら、業務を記述して業務の全体像が見えてきたら、ここをこうした方がよい…というところが出てきます。
現在の業務とは違った仕組みを構築しようとするとき、記述の訓練がそのまま業務構築の基礎作業になります。目標となる機能を決めて、それを達成するためにはどうするのがよいのか…という発想と行動プロセスは、業務の構築でも記述の場合でも同じです。
2 業務改革で成果をあげる
以前、大手メーカーから、業務の記述法(業務マニュアル)の話をして欲しいという依頼がありました。お話をお聞きしてみると、業務改革のコンサルタントに何度か指導してもらったけれども、継続した成果があがらなかったと言うことでした。
部長さんは、業務を記述することの大切さを痛感しているとおっしゃいました。業務改革のアイデアは、各部門にプロがいるので、たくさん出てくるけれども、それを業務の仕組みにして記述することができないとのことでした。記述できないと業務は定着しません。
業務の構築と記述は一体化しています。記述の裏づけが必要です。ただ業務を記述するといっても、細かな作業手順を記述する必要はありません。基本プロセスと成果基準が、記述の中心になります。あとは必要に応じてOJTで経験を積めば、実施できます。
3 記述の基礎を学ぶ
業務の3ステップは、業務の構築、業務の運用、業務の改善…からなります。構築するからこそ、運用が出来ます。実際に運用するからこそ、改善点が見えてきます。改善をしながら、スパイラル的に業務の運用レベルが上がって行きます。
日本人は業務の改善が得意です。しかし、業務の構築は不得意です。プロジェクトを組み立てるとき、もう少し記述を意識してもよいかもしれません。さらに業務の運用の場合でも、目標管理の手法について、検討する余地があるように思います。
マネジメント思考に基づいて業務を記述することを繰り返すなら、マネジメントの理解も進み、記述のレベルも上がって行く…というのが私の考えです。業務の構築案は一回でピタリと行かないかもしれません。何度も作り直しが必要になることもあります。
業務を変更することは、現場から机上の空論だと言われて拒絶されがちです。記述したものがあるなら、現在の業務の仕組みと新たな仕組みが比較可能になります。現場の意見を聞きながら磨き上げることも可能になります。記述の基礎を学ぶべきだと思います。