■「知識労働」への疑問:規格業務と付加価値業務

1 肉体労働と知識労働の対比

業務マニュアルの作成に関わっていると、業務に対する関心が高まってきたことを感じます。また業務形態に大きな変化が起きてきているという感触もあります。まだ一部かもしれませんが、今後、業務の質が問われることは確かでしょう。

かつてピーター・ドラッカーは『経営者の条件』で、肉体労働はもはや社会的な敬意を得られないがゆえに、衰退すると洞察しました。このとき使われた「肉体労働」にあたる原文の英語は、「manual work」でした。

ドラッカーは、ご存知の通り、肉体労働に対して、知識労働という概念を提示しました。「knowlege work」という言い方は、カタカナのまま使われることもあります。定着した用語だろうと思います。しかし、意外に概念があいまいな用語です。

 

2 「知識労働」はあいまいな概念

今後、私たちの業務は知識を武器にした労働になるというニュアンスは、わからなくはありません。ただ、知識というものはあまりに広い概念で、もう少し焦点を絞って欲しいという気持ちになります。

ドラッカーは、1991年の論文「新たな生産性革新の挑戦」で、知識労働とともに「サービス労働」の生産性を取り上げています。しかし、知識労働とサービス労働という2つの労働の違いが明確になっていません。

その後、2002年の『ネクストソサエティ』では、「サービス労働なる言葉が生まれたのが1920年前後だった。この言葉は当時から曖昧だった」とあります。ご本人もサービス労働という概念の援用を放棄したようです。

 

3 規格業務と付加価値業務

知識労働というのは、サービス労働をも含んだ、いわば、肉体労働以外の労働ということになりそうです。これは「ポスト資本主義社会」と言うのと同様、ある概念とは別のものであると言っているに過ぎません。絞りが足らないという感じをもちます。

肉体労働という言い方自体が、もはや現実に合わなくなっています。彫刻家は肉体労働者ではないでしょう。しかし、すばらしい建造物をつくる大工は、肉体労働者と言えなくもありません。肉体労働という概念から、何かが明確になる感じがしない点が問題です。

肉体労働という概念自体を、見直すべきだろうと思います。「manual work」は、古いマニュアル概念を表しています。その概念を表現するのに適切な用語として「規格労働」という言い方が思い浮かびます。指示された規格に沿った業務というべき概念です。

それに対比した概念として「付加価値業務」という概念が思い浮かんできます。付加価値を人間がつけていく業務が付加価値業務になります。人間は、考えることなく指示通りに働かされることに喜びを感じません。

「規格業務」から「付加価値業務」への転換ということになると、見えてくるものがあります。規格業務であるならば、システム化できる業務である可能性が高いでしょう。人間本来の業務は、付加価値を創造し拡大していく付加価値業務の方にあるというべきです。

 

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