■「出来ない」から「出来る」へ:「大丈夫」までの5段階

 

1 「できた!」という実感の重要性

これからどんどん新しいことを学ぶ必要が出てきます。「出来の悪い生徒」ばかりになるはずです。新しいことを学ばなくてはならなくなったとき、私たちは何も知らない状態から始めるしかありません。初学者ですから「出来の悪い生徒」になるのは当然でしょう。

初学者というのは、伸び代があるということです。ただ問題なのは、出来のよい人たちはスタートがまっさらでも、さっさとポイントをつかんで関門をクリアしていきますが、それは少数派だということです。できる気がしないという人がたくさんいます。

長年できないことが多かったから、やる気にならない…という人が多数いるのです。こういう場合、どう学んでいけばよいのでしょうか。最初はわからないのが当たり前ですから、わからなさに堪えていくしかないのですが、なかなか実際にはうまくいきません。

出来ないことが出来るようになった実感を持つ経験が少ないと、わからないからダメだ…とすぐに放棄してしまう傾向が生まれます。これが悪循環を作っているようです。対策は簡単、早い時点で「できた!」という実感が持てるようにしてしまえばよいのです。

 

2 良い問題の「発見」:最初の仕事

「できた!」という実感を持つには、できるものから始めればよいのです。バカバカしくない、きちんとした問題ながら、基本を押えればできる問題を見つけることがポイントになります。指導者がいない場合、自分が自分の指導者になろうとするしかありません。

もし指導する側になるのなら、最初の仕事は良い問題を探してくるか、作成することになります。何となく出来そうな感じの、何でできないのかなあ…と思わせる程度の難易度で、出来たらいいなあ…と思わせるような問題を「発見」することが大切です。

出来ない状態から出来る状態になるのは、どんな場合でも快感です。最初はわずかな苦労で超えられる問題をクリアすること。それが理解できたら、少しレベルアップした問題も解けるはずです。その次の発展問題に正解を出すころには、できる気分になります。

こうした演習というのは計算問題に限りません。解説を習った後にその内容確認の演習を行っても同じ結果になります。「できた!」という人が必ず出てくるものです。できた人は、やる気になっていますから、その輪を拡げていくことが講義の王道になります。

 

3 「できた!」から「大丈夫」までの5段階

レベルが上がっていった人たちの反応を見ると、最初は「できた!」からスタートします。次に「わかった!」になります。そのあとの3段階目は、たいてい「わかってきた」です。一見後退しているようですが、突発的に出来たのではないという実感でしょう。

4段階目に「行けそう!」ということになります。何だか自分はうまくやれそうだ…という気分になるでしょう。こうなるとレベルが上がってきて、5段階目の「大丈夫」という答えになるはずです。ここまでくれば、必要部分をマスターしたことになります。

「できた!」という偶然性を含んだ実感が、自分なりの理屈で「わかった!」になり、個別問題から、ある領域への理解が進むと「わかってきた!」になり、別の領域でも自分は「行けそう!」という気分が生まれます。それを実感すると、もう「大丈夫」なのです。

さまざまな学習を行う中で、参加者がこの5段階を駆け上っていくのが見えることがあります。それはうまくいった場合です。もう少し詰めなくてはいけないところがありますが、上手に5段階を駆け上がっていけるように、環境整備をしていけたらと思います。

 

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