■経営における哲学の欠如:ジャック・ウェルチ『リアルライフMBA』を参考に

     

1 目的・目標・手段で考える

マネジメントの考え方の中核になるのは、目的・目標・手段で考えるということです。哲学では、目的と手段で考えてきました。科学が進んでくると、ここでは目標と手段で考えるようになります。目的は価値観の表れですし、目標は客観的な水準を表すものです。

目的から、あるべき姿が導き出され、それを具体化するときの管理基準が目標になります。この点からマネジメントにおける中心的な機能が、目標管理になるということです。あるべき姿を実現するためのアプローチが、マネジメントだと言ってよいでしょう。

目的によってあるべき姿を示し、その具体的な姿を目標が表し、その実現のための最適な方法が手段ということになります。こうした3つの段階で考えるのが、マネジメントの王道だと言ってよいでしょう。しかし、二段階で考える勢力がまだ多くいます。

     

2 ジャック・ウェルチのミッション

ジャック・ウェルチは『リアルライフMBA』で、[「仕事」の前、最中、そして後に、一貫性をもたせなければならない]と言い、[さて、いったい何の「一貫性」が重要なのだろう?]と問い、[その答えは、ミッション、行動、結果である]とのこと(p.18)。

ここでは形式的に3段階で考えることになっています。ミッションとは[組織が目指すところをきっちりと指し示すもの]であり、[行動は,ミッションを実現するための社員の考え方や感じ方、コミュニケーションの仕方を示すもの]ということです(p.18)。

ウェルチのいうミッションは、目的なのか目標なのか、微妙な感じを与えるのですが、明確に書かれています。[ミッションが会社の目標であるなら、行動は、そこにたどりつく手段、「交通手段」だ](p.23)とありますから、二段階で考えているということです。

     

3 経営における哲学の欠如

ウェルチは、ミッションを[二年間に二万機という目標](p.23)と記していますから、目標と手段で考えていることがわかるでしょう。価値観が入っていないのです。20世紀最大と言われた経営者は、その後の評価がガクンと落ちました。当然のことでしょう。

利益目標を当然の前提とする場合、目的と目標を一致させることが可能です。目標と手段で考える場合、実行の結果を検証して、正しさを判定していきますから、「科学の方法」になります。「ミッション、行動、結果」とは「目標、実行、検証」ということです。

検証というのは、測定し、目標と比較することですから、ウェルチの言うことは目標管理ということになります。目的設定を、ミッションとするのが標準的な考え方ですが、ウェルチの場合、目標です。アメリカの経営者の場合、これは例外ではありません。

哲学の欠如という言い方がなされることがあります。目的が設定されていない場合、哲学の欠如ということです。ミッション経営とか、パーパス経営とか、その種の話が出てくるのは、哲学が欠如しているためでしょう。経営に目的が不可欠なのは、前提のことです。