■読み書き能力を基礎にしたソフトパワー:「グーテンベルク革命」
1 15世紀の「グーテンベルク革命」
15世紀に入って、グーテンベルクによる活版印刷術が発明され、一般の人達も、文字情報が利用しやすくなりました。最初にヨーロッパで、その恩恵が拡大していきます。影響の大きさから、「グーテンベルク革命」という言い方もなされるようです。
玉木俊明は『逆転の世界史』で、[正確な情報が早く伝わる社会の方が、経済発展に適している]、[市場への参入が容易な社会の方が、経済が成長しやすい]というのは当然であり、こうした社会が[近世のヨーロッパで誕生した]と記しています(p.132)。
[商人の識字率はそれ以前から上昇していたのだが、グーテンベルク革命により、さらに上昇した。読み書き能力は、商人にとって不可欠の道具とな]り(p.134)、その結果、[ヨーロッパが他地域よりも高い経済成長率を実現できた](p.132)のでした。
2 商人の読み書き能力
どうやら、グーテンベルク革命となったのは、それ以前からの読み書き能力の上昇トレンドがあったためのようです。そこから読み書き能力が商業と結びついていきます。それが印刷物となって、急拡大していくのです。始まりは、イタリアでした。
▼12世紀のイタリアで、読み書き能力を身につけた商人が、商業に関するメモのようなものを残しだした。それがだんだんと発展して、商売全体のマニュアル、商人の教育法などに関する手引きとなった。これは、「商売の手引き」とよばれる。 p.136
これが伝統となります。[読み書き能力を用い、日々変動する経済状況に応じて更新される情報や活動の記録を書き残すようになった]のです。[16世紀以降になると全ヨーロッパに拡大し、18世紀にいたるまで、途切れることなく続くことに]なります(p.137)。
3 商業の共通基盤
フランスのジャック・サヴァリの『完全なる商人』は[1675年から1800年に至るまで、11回の版を重ねた][もっとも重要な作品]だと、玉木は記しています。この本が広がり、[ヨーロッパの商業慣行は統一されていった]ためです(以上、p.137)。
▼「商売の手引」は、(国際)商業のマニュアル化を促進した。どのような土地であれ、同じようなマニュアルに従って教育された商人であれば、同じような商業習慣に従って行動するようになったのである。そのため、取引はより円滑に進んだ。さらに、商業帳簿・通信文・契約書類などの形式が整えられていき、取引は容易になっていった。 p.138
標準化が進み、これが改善され共通基盤ができ上がるのです。それがヨーロッパ以外の地域にも広がります。ヨーロッパ発のものですから、[ヨーロッパは、世界の商業システムを、ヨーロッパに都合がよいものへと変化させることに成功した]のでした(p.132)。
軍事力がハードパワーだとしたら、商業システムはソフトパワーだということになります。スポーツのルールなど、いまだにヨーロッパのソフトパワーは健在です。各組織も、ソフトパワーを鍛える必要があります。読み書き能力が基礎にあるということです。
