■「なぜ」を問い、「何」を明確にすること:業務マニュアルの基本

     

1 目標達成について

『やってのける』という本があります。ハルバ―ソンというコロンビア大学の心理学博士の本です。「科学的に実証された無数の方法論」とあったので興味を持って読み始めました。原題は「SUCCEED How We Can Reach Our Goals」という正統派です。

[目標達成には、きわめて重要な概念がいくつか存在します][そのうち二つを紹介します]とのこと。第1に「目標を達成できるかどうかは、生まれつきの資質のみでは説明できない」こと、第2に「目標を達成する能力は、誰でも高められる」ことです(p.16)。

陳腐な話ですが、おそらく正しいでしょう。問題は、どうすればよいかです。[それを実現するためのステップはたったの二つ。まずは、目標達成についての現在の考えをいったん忘れること。もう一つは、そう、この本を読むことです](p.16)。心配になります。

     

2 行動を「なぜ」と「何」で捉える

この本の重要点は「第1章 ゴールをかためる」にありそうです。少なくとも、ここで問題にしたいことは、この章にあります。[目標を明確に設定すれば、望む結果を得やすくなります](p.34)というのはその通りでしょう。そのためのアプローチが示されます。

[普段、あなたが自分の行動をどのように捉えているかを調べ]るテストのQ1は、「ToDoリストをつくることは…」「a:頭のなかを整理すること」「b:すべきことを書きだすこと」です。これによって、何に焦点を当てがちなのかがわかります。

「なぜ」を気にするのか、「何」を気にするのかということです。見出しを見ると、その趣旨がわかります。[「なぜ」を考えるとやる気が出る][「何」を考えると難しい行動ができる]。両者をどうとらえるのか、それが問われます。どうも考えが違うのです。

     

3 業務マニュアル作成のポイント

心理学実験での結果がいくつか示されています。それらの結果を踏まえて、ハルバ―ソンは両者を[この「なぜ」と「何」のトレードオフ]という捉え方をしているのです(p.47)。ここが一番違うところだと思いました。トレードオフという発想はとれません。

少なくとも、仕事の仕組みを作るときに、こうした発想とは別の発想が必要になります。「なぜ」と「何」が重要だという点では異論はありません。仕事の仕組みを作るときに一番基本になることは、「なぜ」を問い、「何」を明確にすることです。

トレードオフではなくて、両方が必要だということになります。個人が意識しないでいると、トレードオフになるのかもしれません。成果を上げるためには、意識して両者を明確化することが必要になります。仕事の仕組みを考える業務マニュアルでは不可欠です。

成果を上げるには、「なぜ」を問い、「何」を明確にすることから始める必要があります。仕組みを作る場合には、よほど意識して詰めていかないと、甘いものになりがちです。業務マニュアルを作るときの、重要なポイントだと言えます。

      

カテゴリー: マネジメント パーマリンク