■日本語における「主題」:読み書きに使えない概念

     

1 助詞「は」「が」の違い

日本語には主語がなくて、主題があるという見解があります。通説的な見解になっているのかもしれません。読み書きには役に立ちませんが、ちょっと聞きには、興味をひきそうです。助詞「は」がつくと、主題になるというのですから面白いかもしれません。

「クジラは哺乳類です」という例文の「クジラ」には「は」がついています。よって「クジラ」が主題です。例文の「クジラは」の「は」を「が」に変えるとどうでしょう。「クジラが哺乳類です」となります。日本語としては、おかしな文です。

こうしたことから「クジラ」を主題にするのは「は」であり、「が」ではないということになります。これはたしかですが、助詞「が」の主体を表す機能が失われるわけではありません。ここで言えることは、助詞「は」「が」には違いがあるということだけです。

      

2 「特定し限定する機能」と「選出して提示する機能」

助詞「は」は特定し限定する機能を持っています。特定の対象だけについて語るときに、「は」がつきます。他のものは知りません、「クジラ」に限って言えばの話です…ということです。「AならばB」を表すとき、こういう「は」の機能が活かされます。

助詞「が」の場合、特定するのではなくて、選択肢から選び出して提示する機能を持っています。「私は行きます」ならば、「私」に限定したことです。「私が行きます」ならば、「私」を自らが選び出していますから、そこに意思が感じられます。

「私は行きます」と「私が行きます」に違いがあるのはたしかです。同時に「は」も「が」も主体の目印になっています。助詞「は」だけが特別な助詞になるわけではありません。特別な価値基準を入れない限り、スーパー助詞にはならないということです。

      

3 「主題」概念の不明確さ

日本語文法の業界で使われる「主題」という概念は、一般の人にはよくわからないものです。例えば、「明日は会議が午前10時から開始です」ならば、「明日」が主題、「明日の会議は午前10時から開始です」ならば、「明日の会議」が主題になるのでしょう。

こうしたニュアンスからすると、「明日の会議ですが、午前10時から開始です」の主題は「明日の会議」になりそうです。「明日ですが、会議は午前10時から開始です」の場合、感覚的には主題は「明日」でしょう。しかし「は」のつく「会議」かもしれません。

こういうケースに出会うと、日本語における主題とは、どんな概念なのだろうかと、わからなくなるのです。英語ならば、文法事項としては「主語」だけを扱い、これとは別に、情報の流れを表す概念として、主題にあたる「シーム」を導入して説明しています。

英語の「シーム」とは、文頭に置かれた語句のことであり、位置を重視するため、わかりやい概念です。例文「明日ですが、会議は午前10時から開始です」に当てはめると、主題は「明日ですが」になります。日本語における主題概念は、いまだ不明確なままです。

      

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