■ドラッカー『経営者に贈る5つの質問』の使い方:なぜ5つしか質問がないのか

     

1 なぜ5つしか質問がないのか?

日本企業にお勤めの部長さんに、ドラッカーの『経営者に贈る5つの質問』という本を知っていますかとお聞きしました。知らないとのこと。別に知らなくても問題ありません。5つしか質問がありませんので、それを読み上げました。それで聞いてみたのです。

そのとき、こんな風に聞きました。「なんで5つしか質問がないのでしょう?」「5つですから、マネジメントを網羅しているはずないのですが、何のためにこういう質問が必要だと思いますか?」「この質問をどんな風に使っていくことが想定されるでしょうか?」

わからないということでした。質問が5つしかありませんから、すぐに質問できます。繰り返し自らに問うことが可能です。必要に応じて何度も、この質問をすることによって、日々のビジネスが自分の考えとズレてきていることに、気づきやすくなります。

     

2 繰り返し問うべき基本的な質問

変化に気がつくのは、簡単なことではありません。チェックリストがあったら便利でしょう。5つの質問とは…「われわれの使命は何か」「われわれの顧客は誰か」「顧客にとっての価値は何か」「われわれの成果は何か」「われわれの計画は何か」の5つです。

5つの質問に絞り込んでいるのは、繰り返し自らに問うべき質問だからです。必要項目が網羅されていなくても、質問の答えに変化が起きたなら、さらに追及することができます。環境や考えに変化があったら、それを機会にする必要があるということです。

それぞれの質問に答えるのは大変でしょう。さらに答えを得ても、そのままでは役に立ちません。繰り返し自らに問うことが必要です。ブレずに、どちらに進んでいくのだと確認していくことになります。こうして自ら進むべきものが、明確になってくるはずです。

     

3 大枠がブレないようにするために

質問の目的からすれば、ドラッカーなら「自分の強みは何であるか?」「機会はどこにあるか?」「強みを活かした仕事をしているか?」という質問も考えられるかもしれません。いずれにしても何らかの変化をキャッチして、対応するための質問が必要です。

このとき、最初に決めた構想に変化が起きやすい場合と、変化しにくい場合とがあることでしょう。新たに始めたビジネスなら、想定外のことが起こるという前提でいなくてはなりません。最初に決めた構想にこだわることは、チャンスを失うことになります。

逆に従来からの実績があって、その前提で始めたことならば、安易に構想を変えることは好ましくありません。リスクをもたらす可能性があります。何かを企画して、期限を設けて実施する場合、プロジェクトが完成するまで大枠のブレないことが大切です。

どちらの場合でも、基本構想は簡単にブレがないようにする必要があります。何度となく基本的な質問を繰り返すことが効果的です。こうして詰めがうまくいくようになれば、ブレずにその先に進んでいけるのではないか、そう思って、この本を使っています。