■目標の立て方:目標設定までのプロセス

1 目標設定の前段階

目標を立てるプロセスを少し整理しておきたい。まず、ビジネスの定義を行うことからスタートすることになる。「環境、使命、卓越性」から自分たちの生きていくべき道を見つけていくことである。これは「The Theory of the Buisiness」に書かれている。

次は、マーケティングの基本を確認することである。「誰に・何を・どのように(who what how)」のかたちに自分たちの仕事のあり方を整理する。シンプルな形式に整理することによって、自分たちの仕事の原点が明確になる。ここからビジネスの構築が始まる。

その次は、マーケティングという静的な分析を、活動可能な方向に展開するためにビジネスのモデルを作ることである。ビジネスに必要な実践に必要な人・コスト(手間・カネ)・時間などを検討し、基本のルールやプロセスを検討し、仕組みにしていく。

ここまでが目標設定の前段階である。ビジネス(事業)の定義をスタートにして、ビジネスモデルを作るところまでが、戦略であるということになる。こうした流れの先に、目標の設定がなされるべきである。ここでは、以上のプロセスを原則に話を進める。

 

2 戦略が目標に先行する

目標というのは、ビジネスモデルに基づいて、対極の見通しから設定されるものである。現時点のビジネス環境と今後を考慮し、それを前提にして、ビジネスモデルから狙える最高水準を見出すということである。その最高水準の客観化が目標ということになる。

達成の可能性があるときに、最高水準よりも低いものを目指すのは、意味がない。高い目標が必要なのは、裏づけのある高さであれば、やる気が生まれて、達成の可能性が高まるためである。したがって「達成の可能性のある最高水準」=「目標」となる。

ビジネスを定義し、マーケティングの視点でそれを整理し、ビジネスモデルを構築し、現状と予測をもとに、一番高い達成の可能性のレベルを見出すという作業が目標を立てるプロセスである。ビジネスモデルの構築までが戦略であるから、戦略は目標に先行する。

 

3 参考にすべきドラッカーの著作

ビジネスを定義する場合、ドラッカーの1994年の論文「The Theory of the Buisiness」を基本にすべきである。分析すべき要素として取り上げられたのが「環境、使命、卓越性(強み)」の3つであった。ここでは『マネジメント』での考えが修正されている。

このうち「使命」と「卓越性(強み)」の分析について、ドラッカーはそれぞれ『非営利組織の経営』、『明日を支配するもの』で言及している。どのように使命を作り上げていけばよいのか、どのように自らの強みを見出したらよいのかを論じている。

必ずしも、明確に整理されて論じられているわけではないので、これらの記述を再確認することが重要になってくる。ただ、ドラッカーの場合、ここに別の問題が加わる。ビジネスの構築について、『マネジメント』以降、全体の体系化が不明確になっている点である。