■目標の立て方:マネジメントの目的から考える

1 「顧客」という概念

目標を立てるときに、まず自分たちのビジネスを定義することから始めることになる。この定義をどう立てたらよいのかについて、ドラッカーは1973年の『マネジメント』で言及している。そこでは営利組織の目的はただ一つ、顧客の創造だと主張していた。

顧客の創造が目的であるのだから、顧客から出発すべきだとドラッカーは主張する。しかし実際のところ、営利組織の目的とみられる「顧客の創造」は顧客の定義によって、その意義が変わってくる。自分たちの製品、サービスを買う人だけが顧客なのだろうか。

晩年の『経営者に贈る5つの質問』では、非営利組織においても、顧客という概念を使って語っている。5つのうちの2番目の質問は「われわれの顧客は誰か?」であった。会社に限らず、非営利組織にも顧客を想定した方がよいという考えに立っている。

どんな点で、営利組織の顧客と非営利組織の顧客は共通しているのだろうか。非営利組織の顧客とは、どんな存在であるのか。おそらく組織で行っている活動を必要としている人が顧客なのであろう。そう考えると組織に限らず、個人の活動にも使える概念になる。

 

2 「経営者」の概念

顧客の創造というのは、提供する活動が必要となる人たちのことである。自己マネジメントというのは、自らを経営者にして、同時に自らを顧客と考える形式を採用している。「経営者」も共通した存在である。そして経営者とは、目標を達成させる人である。

ここで設定される目標が利己的なものである限り、その達成は評価されない。使命が問われるのも、そのためである。自分にとって大切な人たちに、どう思ってもらいたいのか…という他者の視点を活用して、自分の考えを明確にしたものが使命であるといえる。

ドラッカー後期を代表する1994年の論文「The Theory of the Business」では、顧客を明確にするのに先立って、環境、使命、卓越性から自分たちの生きていく道を見つけていくべきであると主張している。顧客の創造は結果であるということになる。

 

3 マーケティングの概念

顧客の創造とは、マネジメントの成果である。マネジメントの目的は目標の達成である。目標を立てるには、ビジネスの定義を行うことが必要であり、それによって見出されたものを「誰に・何を・どのように(who/what/how)」に基づいて整理する必要がある。

「誰に・何を・どのように」提供するかということがマーケティングの中核である。マーケティングによって、自分たちの仕事のあり方が明確になる。そこからビジネスモデルを作っていくことになる。マーケティングという静的なものを動的にする作用である。

ドラッカーも『マネジメント』でこの点に言及している。[マーケティングだけでは企業としての成功はない。静的な経済には、企業は存在しえない。企業人さえ存在しえない](p.79)。[変化を当然とする経済]に適応する仕組みが必要になるということである。

 

 

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