■『プロフェッショナルの条件』を読む:その2
1 成果をあげてきた人が学んだこと
『プロフェッショナルの条件』のパート3の1章は「私の人生を変えた七つの経験」になっています。見出しを見るだけでも内容が分かるかもしれません。最初の経験について、見出しは「目標とビジョンを持って行動する」になっています。
「七つの経験」でドラッカーは自分の仕事についての指針を語っています。自分がどう考えて、どう仕事をしてきたかについて語っているのです。ドラッカーが自分の自己マネジメントについて一番真正面から語ったものではないかと思います。素晴らしい文章です。
見出しを記しておきます。「私の青年時代」「目標とビジョンを持って行動する」「神々が見ている」「一つのことに集中する」「新しい仕事が要求するものを考える」「書きとめておく」「何によって知られたいか」「成長と自己変革を続けるために」…です。
▼これらのことを紹介したのは、簡単な理由からである。それは、私が知っている人のうち、長い人生において、ずっと成果をあげてきた人のすべてが、私と同じようなことを、どこかで学んでいるからである。 p.108
2 フィードバック分析
「私の人生を変えた七つの経験」はドラッカーの自己マネジメントの総論と言えそうです。次に置かれている「自らの強みを知る」では、自己マネジメントを行う際にどうすべきであるかの、具体的な方法が示されています。『経営者の条件』にない内容です。
[これからは、誰もが自らをマネジメントしなければならない]と言う書き出しになっています。中核となるのは、強みの分析です。[自らについて知りうることのうち、この強みこそもっとも重要である]とドラッカーは言います。その方法が示されているのです。
▼強みを知る方法は一つしかない。フィードバック分析である。何かをすることに決めたならば、何を期待するかをただちちに書きとめておく。九か月後、一年後に、その期待と実際の結果を照合する。私自身、これを五十年続けている。そのたびに驚かされている。これを行うならば、誰もが同じように驚かされる。 p.112
フィードバック分析によって、[二、三年のうちに、自らの強みが明らかになる]のです。その分析から[いくつか行うべきことが明らかになる]、つまり[第一は、明らかになった強みに集中することである][第二は、その強みをさらに伸ばすことである]。
ドラッカーは7つあげていますが、最初の2つが基本になります。強みと同様に大切なのが「仕事の仕方」です。強みに集中して、それを伸ばすためには仕事の仕方を考える必要があります。自分の価値観を大事にして、自分の仕事を見出すべきだと記しています。
3 『経営者の条件』を中核にする
『プロフェッショナルの条件』の中核となるパート3は、ドラッカーの自己マネジメントのエッセンスというべき部分です。『経営者の条件』を踏まえた総論というべき「私の人生を変えた七つの経験」と各論というべき「自らの強みを知る」が並んでいます。
その後に『経営者の条件』のなかでもとくに重要な「時間を管理する」(『経営者の条件』の2章)と「もっとも重要なことに集中せよ」(5章)がありますから、これだけで一番いい部分に触れることができます。続けて読んでも普通に読める構成です。
上田惇生による見事な編集というしかありません。ここだけでも読んでみる価値はあると思います。そして「もっと…」という気持ちになったならば、『エッセンシャル版 経営者の条件』として他の章を読み、上記をもう一度復習として読むのがよいでしょう。
勉強会の場合、マネジメントを理解することが目的でした。まず自己マネジメントから始めて、何年かかけてということです。そのため『経営者の条件』の章立てを尊重し、そこに二つのエッセンスを入れていくスタイルをとりました。これはまだ継続中です。
『エッセンシャル版 経営者の条件』(『プロフェッショナルの条件の章立て』)
1章該当:パート2 2章「なぜ成果があがらないのか」
2章該当:パート3 3章「時間を管理する」
3章該当:パート2 3章「貢献を重視する」
4章該当:パート4 5章「人の強みを生かす」
5章該当:パート3 4章「もっとも重要なことに集中せよ」
6章該当:パート4 1章「意思決定の秘訣」前半
7章該当:パート4 1章「意思決定の秘訣」後半