■反復の過程:講義・研修の仕組み

 

1 大量の演習問題をやる授業

最近は積極的に資格を取ろうとする学生が減ってきているようです。そのため学校側が誘導するような形で、試験対策の選択授業を設けています。資格試験のための専門学校の講師が学校まで出向くこともめずらしくありません。やや受け身の学生が主流です。

先日、選択授業で400題の問題を解かせているという先生とお話しました。以前に私もその授業を担当したことがあります。その授業に参加するためには試験がありますから、やる気のある学生たちです。誇らしげに担当の先生がお話するのも分かる気がします。

コマ数から言えば、400題という問題数は毎回やれるところまで、きっちりやったというべきです。よほどの学校でない限り、ここまでやるのが精いっぱいだろうと思います。私が担当したときに演習したのは100題程度でした。ギリギリまでおやりになったのです。

 

2 手ごたえを感じていた講師

毎回、授業中にきちんと演習を行って解説を加えていく講義ですから、参加した生徒たちの実力は伸びるはずだったのです。就職対策の講義を担当したときやってきたそれらの学生たちは、ある種の達成感を持っていました。その点では、よかったと思います。

講師も一生懸命やって手ごたえを感じ、生徒たちも満足なのですから、良い講義だったというべきでしょう。やることをやる経験は貴重ですから、無駄なはずありません。ただし問題は成果です。達成感とは裏腹に、せっかくの努力はあまり報われていません。

たくさんの問題をやったはずの学生たちに中核的な問題をいくつか出すと、必ずと言っていいほど、「ああ、やったなあ」と言います。典型的な問題を出したときに、生徒はどこかでみた問題だということに、すぐ気がつくのです。しかし出来はよくありません。

一度できたから、そのあとずっとできるなどというのは例外的なことです。一度できたものが出来なくなります。それが標準的な習得のありかたでしょう。典型的な問題を一度やっておいて、また忘れた頃に反復できるように授業を組んでおく方が効果的です。

 

3 反復が必要不可欠

社内教育の担当者から、目いっぱいのプログラムを組んで、徹底的に鍛えあげたという話を聞いた人がいるかもしれません。参加者の成果は試験対策と違って見えにくいものですから、満足感で判断されるはずです。満足感の高いものが多くあるだろうと思います。

残念ながら、時間の範囲内で目いっぱいの問題演習をやるような講義の場合、成果は限られます。満足感は高くても、成果はそれほどではありません。400題の問題をやった先生の努力は立派ですし、いい先生です。しかし試験対策の講義としては失敗しています。

反復が少ない講義では、なかなか実力がつきません。社内教育でも同じです。やれる、わかるということと、身についたというのでは違いがあります。やれたはずのものが、できなくなって、それがもう一度やれるようになるという過程が欲しいのです。

社内教育でも、反復の過程を最初から組み込んでおくことが成果につながります。反復の時間をとるために、必要事項を網羅しながら分量を少なくする工夫が求められます。標準的な努力で達成できる仕組みには、反復の過程が必要不可欠だということです。