■クリエイターになる方法:斉須政雄『調理場という戦場』から

 

1 日常生活の積み重ねを重視

フレンチ・レストランのオーナーシェフがどんな思いで、どんな方法で仕事をしてきたのか、『調理場という戦場』で斉須政雄は語っています。丸谷才一が「人はこれを人生の書として読むだろう」と評した通りです。考えるヒントになる言葉がいくつもあります。

最高峰の料理はどうやって出来上がってきたのでしょうか。まず[一つ一つの工程を丁寧にクリアしていなければ、大切な料理を当たり前に作ることができない。一つずつの行動が伴わないといけない]というのが基礎です。ただ斉須の考えは常識より積極的です。

[便利すぎると、人は動かなくなる]からと、不便な環境を前向きにとらえて[独自のマニュアルを生み出]して解決を図ります。[毎日やっている習慣を、他人はその人の人格として認めてくれる]と斉須は信じて、[日常生活の積み重ね]を重視するのです。

 

2 アレンジャーでなくてクリエイター

不便を乗り越える発想が、クリエイターとして飛躍することにもつながりました。「ランブロワジー」で出会ったベルナールは、アレンジャーでなくてクリエイターでした。この人から学んでいます。彼[がいなければ、今のぼくはないでしょう]と言うほどです。

「この方法、よくないな」と思ったら違う方法にすぐに移る。彼の方法の推移が劇的にいい結果を生んでいるのを、目の当たりにしました。ダメだと思ったら引いて、別なことをやってみるというのを、絶えず、しかも静かに持続しているのです。

斉須には[静かなのにアイデアに満ちている]姿がショックでした。[やってることは、調理場にいる他の人とまったく同じ]なのに、[必ず別なことを考えている][思考回路が別]です。ずっと継続して[今日も静かに料理のことを考えている]姿が見えます。

いつでも考えつづけていることが創造の基礎のようです。考える時間をとるのではなくて、つねに考え続けるのが日常になるということでしょうか。大きな組織を運営するのとちがった、個人の能力に依存するクリエイターの仕事の方法がここで示されます。

 

3 一つの優れた特性で勝負をする

最高峰にまで昇っていくときにも斉須はベルナールの姿を思い浮かべています。[ベルナールは、いい話が来てもすぐには手を出さないし、発言をしない]、なんでと思うほど[目の前にぶらさがっているものを急いでとることはなかった]と言うのです。

[彼からは、最短距離で目標を掴み取りたいという生臭いところはまったく感じることはなかった][二段跳びも三段跳びもしないで、一段ずつしっかり昇っていきましたから。その映像が頭の中に残っていて、それを時々反芻しては自分の糧にしています]。

こう考えるのも、[「これは、夢のような幸運だ」と思っているうちは、その幸運を享受できるだけの力がまだ本人に備わっていない頃だと思う]からです。斉須の言う「力」とは、その人の強みを発揮するもの[オリジナルな仕事]をする力を指しています。

[一つの優れた特性で勝負をする人のほうが、何でもできる人よりも商品価値がある。あれもこれもこなせるというのは、平均から脱することのないつまらなさでもあるからです]。以上は、如是我聞にすぎません。大いに学ぶところのある本です。

 

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