■内容あっての図解:図解作成講座を終えて
1 シンプルな道具を使う
図解講座を実施しました。多くの方の受講に感謝しています。図解といっても多様ですので、これでなくてはいけないという正解はありません。とはいえ、最低限のルールがありますから、これを守ったほうがよいという項目のお話が中心になります。
ビジネス人が図解をする場合、あまり時間をかけて作図をするわけにはいきません。そういうとき、使う道具をシンプルにすることが大切です。内容が重視されますから、言いたいことがはっきりしているなら、内容がストレートに伝わる図にすべきでしょう。
図解というのは、図で何かを言うことです。何を伝えるかを明確にする必要があります。伝えるべき内容は論理性のあるものが中心です。データの裏づけがあったり、定量化ができていたり、単なるイメージでないものを図にするということになります。
2 確定要素であることの確認
図解するときに注意すべき点に、不確定要素を確定要素にしないようにということがあげられます。しばしば指摘されることですが、意外に多くみられます。不確定なものでも明確に言い切ってしまうと、何となく説得力があるようにみえるのかもしれません。
図の場合、シンプルであることは大切な美点ですから、明確な言いきりによって物事がきれいに整理され、これが正しいというイメージができることがあるかもしれません。ただし、いったんおかしいところに目がいったなら、その図は価値を失います。
誰かが気づいてそれを指摘すれば、もはやその図の内容は信用されません。作図者が意図して不確定要素を確定要素に変えたなら論外ですが、多くの場合、基礎的な確認不足によって本人自身が誤解しています。図解以前の段階でミスすることが意外に多いのです。
3 イメージ先行のリスク
図によって何かを伝えるとき、イメージが大切なことは確かでしょう。営業でもその他の場合でも、アピールする必要がありますから、よいイメージが重要になります。ただしその場合でも、裏づけをもたせることが大切です。イメージだけの図では困ります。
先に結論ありきで図を作ると、どうしても図解以前の段階での詰めが甘くなります。ミスリードをした場合、大きな信用の喪失になりますから、よほど注意しないといけません。学術論文に不適切な図をのせて信用を失うのと同じことだと言えるでしょう。
かつて『抄訳マネジメント』の各章の先頭に、内容を示す図を入れていた上田惇生は、『エッセンシャル版』に改訂するときに、図をすべてはずしてしまいました。わかりやすさよりも、本文とのずれを気にしたようです。ドラッカーは図式化を警戒していました。
内容が正しい場合、簡潔で明確な図ほど説得力があります。そうなるように努力が必要です。同時に簡潔なものほど、内容の不十分さに気づかれる可能性が高くなるといえるでしょう。妥当な内容がないのに作図することは、リスクを負うことになるといえます。