■OJT・教育用マニュアル作成の重要性:知識化の鍵
1 OJT・教育用マニュアル作成講座
11月にOJT・教育用マニュアル作成講座を実施することになりました。業務が高度化すると、標準化した作業だけでは仕事が十分にこなせなくなります。業務マニュアルとOJT・教育用マニュアルの役割分担が必要です。車の両輪といった感じでしょう。
業務マニュアルで示された指針や基準で仕事を進めていくとき、実践して確認しておく必要のある仕事の領域はかなり大きくなっています。業務マニュアルがないと、指針なしになって困りますが、指針だけでは現場の仕事を十分にこなせるようになりません。
業務マニュアルを再定義する必要が出てきているのと同様、OJTや社内教育に関して、もう一度実施方法を見直す必要が出てきています。簡単な作業なら、先輩にOJTを丸投げしても問題ないでしょう。問題となるのは重要な業務のOJTや教育についてです。
2 『失敗学のすすめ』で主張する知識化
OJTの方法を考える場合、いままでの成功事例、失敗事例を元に、どういうステップにしたらよいのか、どういう点に気をつけたらよいのかを考えていきます。同時に訓練を実施したあと、成果を見ていくことになります。プログラムが必要になるのです。
どういうプログラムでOJTを実施したか、確認できる組織はまだ少数です。事例説明に依存して、こういう失敗がありますから気をつけましょうと注意喚起するだけの例や、禁止事項を確認するだけの例が見られます。これではプログラムになっていません。
畑村洋太郎が『失敗学のすすめ』で主張したことも同じです。知識化が必要だということでした。知識化というのは、事例を元に使えるように仕組みやコンテンツに構成して情報を伝えることです。教育訓練になるようにプログラムにするのも、同じことです。
3 真に教育ある人間の要件は何か
過去の失敗事例を2万件並べて、事例を見やすいようにデータベース化しても、失敗が減らなかったという話が『失敗学のすすめ』の中にあります。事例はつねに古くなり、同じ条件で再現されることはありません。中核となる条件を洗い出す必要があります。
OJTのプログラムを作る場合、はじめに一般化・客観化したステップを示すことが重要です。先にプロセスを示し、基準を示し、そこに事例を組み合わせることによって、理解が深まります。全体の道すじが見えると、実践の意味も理解しやすくなります。
管理者の方なら、これがたんなる新人教育でないことを理解しているはずです。仕事のできる人を会社は教えることができません。しかし、その人の実力をさらに伸ばす方法があります。教育担当者になってもらって、プログラムを作り実践してもらうことです。
ドラッカーは『ポスト資本主義社会』で、<一般知識から専門知識への重心の移行が、新しい社会を創造する力を知識に与える>と言い、このとき<真に教育ある人間の要件は何か>という新しい問題が生ずると指摘しています。この点が問題になっているのです。