■ベストセラーを量産する作家 ジェームズ・パターソンの方法
1 67回もベストセラー1位に
昨年のニューズウィーク(2015年7月21日号)に「ベストセラーの書き方教えます」という記事が載っていました。印象的なものでしたが、たった2ページのものだったからか、書かずに忘れてしまったようです。改めて読んでみて、重要な話だと思いました。
オンライン講座にベストセラー作家などが講義をするサービスがあるそうです。その中に、ジェームズ・パターソンというベストセラー作家の講座があるとのこと。この講座を受講したアビゲイル・ジョーンズという物書きが記事を書いています。
ジェームズ・パターソンはニューヨーク・タイムズのベストセラー1位に輝いた回数でギネス世界記録に認定されている作家です。記事の書かれた時点で67回もベストセラー1位になったというのですから、ただことではありません。
2 本当に面白い話を中核に
パターソンは祖父から言われた言葉を授業で紹介したそうです。「どんな仕事であれ毎朝仕事に出かけるときは歌を口ずさんでいなくちゃならない。俺は毎日歌っているぞ。毎日な」というものです。書くことは辛いと思っている人にとっては意外なことでしょう。
ジョーンズは<同じ物書きとしてショックだった>と言います。<書くことには高揚感と同じくらい苦痛も付きまとう>というのが普通です。ところがパターソンは<「話すように書く」のが自分の作風だ>と言い、苦労なしに書き続けているのです。
パターソンは<人に聞かせたい面白いエピソードを2つ3つ書かせてみるといい>、<名文は1つも出てこないかもしれないが、話としては本当におもしろいはずだ>と語り、文章に何が必要かを指摘します。本当に面白い実質のある話を中核に置けということです。
3 大切なのは時間確保と最初の準備
ジョーンズは、パターソンのベストセラー量産の秘密を探ります。2つのことが大切なようです。第一に<自分なりの日課を確立することが何より重要>であり、パターソンは国際的な広告会社に務めながら、<毎朝5~7時の2時間を執筆に充てた>そうです。
もう一つパターソンの書き方で重要なのは、<執筆に取り掛かる前に必ず作品の概要を3~6回書き直す>ことです。<そうしておけば後々ずいぶん気が楽になる。概要も書けないようじゃ本1冊書くのはたぶん無理だ>…とのこと。
ヒルティが『幸福論』で語っていることを思い出しました。ヒルティは、規則正しく働くことが最上の方法であると言い、それを習慣にしてこそ本物だと指摘しています。また、仕事を容易にする<とっておきの方法>は<繰り返すこと>だとも言っています。
ベストセラー作家の方法も、特別ではないようです。文章を書く時間を確保すること、最初に全体構想をきっちり詰めてから書き出すこと、これらは仕事の基礎だと思います。ビジネス人も時間を確保し、最初に内容を詰めてから書きはじめる必要があります。