■名前の付けかた:ビジネスでの基本原則

 

1 名前付けが難しい

ある概念を説明しようとするとき、その名前をどう付けたらよいのか、しばしば迷います。正確な内容を表す名前であっても、なじみのないものは受け手に伝わりにくいことになります。サカモギ構造と言われても、おそらく判らないはずです。

サカモギ構造を漢字にすると「逆茂木構造」となります。「逆茂木」とは「敵の侵入を防ぐために、先端を鋭くとがらせた木の枝を外に向けて並べ、結び合わせた柵」とのことです。木下是雄が『理科系の作文技術』で日本語の論理の流れの構造に付けた名前でした。

名前から概念を推定することが難しく、名前だけで拒否反応が出そうです。もともと名前だけで概念を正確に伝えるのは無理があります。何となく内容が推定できれば十分でしょう。名前付けは難しいものです。適切な名前なら簡潔に定義すれば伝わるはずです。

 

2 概念の取り違い

多くの場合、新しい概念に名前を付ける段階でつまずいている気がします。名前がうまく付けられないために、概念自体が無効化することさえありそうです。逆茂木のようになじみのない用語でなくても、一般的な用語を使って命名した場合にも問題が起きます。

哲学用語など、それを使う哲学者の定義によってずいぶん意味が変わります。木田元は『反哲学入門』で、デカルトの使う「理性」という言葉が普通に使われる意味と違う…と指摘しています。デカルトが「理性」という用語の概念を再定義して使っているのです。

専門書を読むときに、こうした用語の意味の読み違いをする可能性がしばしばあります。基本用語の概念を取り違った場合、本全体を誤読したというべきでしょう。読む側も書く側も、重要用語によほど気をつけないといけないだろうと思います。

 

3 用語の統一原則

ビジネス文書の場合、自分なりの命名をすることはルール違反だとみなされます。誤解を呼ぶ可能性があるためです。組織で何かを示すときに、共通概念を形成している場合でも、その用語を外に向けて使うときには、もう一度検証しないといけなくなります。

同じ組織でも部署ごとに、同じ概念に対する言い方が違うこともあります。重要な概念の場合、組織内での統一が必要になります。業務マニュアルを作成するときに、使われているキーワードが組織内で統一しているかどうか…という点がしばしば問題になります。

使われる用語が一般用語でない場合、原則に沿った解決が必要になります。(1)概念にふさわしい名前であるかを確認する、(2)用語が流通する領域を確認する、(3)用語の概念を簡潔に定義する。私たちは(1)を忘れがちです。ひどい用語が多い組織もあります。