■北イタリア型のビジネスモデル:アルカンターラの事例

1 イタリア1の中堅企業

小さな勉強会で、マーケティングとビジネスモデルの話をしたことがあります。このとき、東レの極細合成繊維「エクセーヌ」のイタリアでの事例にふれました。アルカンターラというブランド名で成功しています。この事例は参考になると思ってのことでした。

東レで海外事業を行っていた小林元は『イタリア式ブランドビジネスの育て方』に、このときの経験を記しています。1975年、イタリアのミラノにイガント社を設立、この会社がアルカンターラ社に改名され、イタリア1の中堅企業と評価されることになります。

欧州での知見を生かしてもらうため、販売戦略の基本をイタリア人に任せました。そこでの戦略は、<1950年代から北イタリアの繊維業者たちが試行錯誤を繰り返し1970年代に確立した北イタリアのラグジュアリーブランドビジネスモデルに則ったもの>でした。

 

2 基本とする販売戦略

この事例でイタリア人が示した販売戦略は3つです。(1)素材の機能性をアピールし、これを評価するゲルマン民族をターゲットにする、(2)色彩とタッチのすばらしさを活かす、(3)汎用品にせずブランドになるよう時間をかけて育てる…というものでした。

上記を前提にしたマーケティング戦略は、(1)顧客をアッパーとアッパーミドルに限定し、(2)ブランド名を熟慮する、(3)価格を高めに設定し、その維持のために供給量を抑制する…ことです。その結果、アルカンターラはブランドになりました。

10年近くたってアルカンターラの衣料が飽和状態になり、売上が1984年から減少しはじめたときも、販売価格を下げることを拒否しています。その代わり、家具と車のインテリアという新しい用途を開発することで、第2次ブームを巻き起こしています。

 

3 汎用化と違う別のモデル

日本ではまだ汎用化の意識が強いようです。イタリア人は、<「人間の手作業が最高の価値を生み出す」という固い信念をもっている>ので、<本当に消費者に喜んでもらえるものを作り出すためならコストをかける>という発想をとります。

アルカンターラでも、イタリアの伝統的な色を出したいとの要望が販売スタッフからありました。コストアップになるのですが、<我々はこのイタリアンカラーであれば、コストアップの分を上回る製品価格の値上げをして見せる>と言い、実行しています。

別のイタリア人デザイナーが言ったそうです。<ちょっと個性的なデザインやカラー>のケトルがキッチンにあると、<この家の主人の個性がさりげなく表現>できるから、そこにコストを払います。早くお湯が沸いたり、へこまない材質はポイントではない…と。

<顧客に感動を与えるような美しいものを作り出す>のは簡単なことではないでしょう。しかし汎用化と違う別のモデルを考えようとするとき、<家族経営の零細企業が事業を起こす例がほとんど>の北イタリア型のビジネスモデルは、参考になるように思います。

 

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