■業務を記述するための基礎力:業務の観察

 

1 どういう仕組みなのかの観察

業務を記述するとき、どんなことが基礎力になるのかと聞かれました。いろいろなサービスを見たとき、業務の組み立てがどうなっているかを観察して考えることが基礎になります。仕組みの違いに気がついたなら、その違いについて考えてみるということです。

たとえばマクドナルドでハンバーガーを受け取るときと、スターバックスでコーヒーを受け取るときでは、ちょっと違います。客としてお店に出かけたとき、この違いに気づいたら、どういう仕組みかを考えてみるのも、おもしろいことではないでしょうか。

注文をしてお金を払って、そのあとマクドナルドではその場で注文の品を受け取ります。スターバックスは別の場所に移動して受け取ります。好みもありますが、業務の仕組みが工夫できるなら、その場で処理するほうが、多くの場合、効率的なことはたしかです。

 

2 要素と構造を考える

業務をどうすべきかという点に関して、正解はないでしょう。ただ自然な効率的な方式が定着します。それが、どういう風に成り立っているのかを考えてみたらいかがでしょうか。出来上がった仕組みの後追いとなる業務の観察が、必須の訓練になります。

仕組みがどうなっているのかを探るには、業務の構築がどうなされるのか…の基本を押さえておく必要があります。業務の構築があってはじめて業務が運用できます。業務をどういう仕組みにするか…を決めることによって、業務の反復が可能になります。

畑村洋太郎が『創造学のすすめ』で記す通り、<世の中の事象は『要素』『構造』から成り立っており、それぞれのものがいろいろな『機能』を果たして>います。業務の仕組みに気づいたら、その要素と構造がどうなっているのかを探ることがポイントです。

 

3 業務の仕組みを評価してみる

大切なことは、業務を見るときに、出来上がった仕組みとその効果を評価してみることです。注文の品を、その場で受け取る仕組みに気づいたら、お客さんに向き合う人を代えずに物を動かすには、どういう工夫が必要なのか…と考えていきます。

すばらしい仕組みだと思ったら、それを成り立たせている必須の業務を見つけることが大切です。必須の業務の流れを見ることで、業務(要素)の組み合わせがどんな構造になっているのかが見えてきます。そして、なぜそれがすばらしいのかを考えることになります。

もちろん業務の詳細は当事者でないとわからないのが普通ですし、記述する側は、それを聞き取る必要があります。ただ業務の観察を続けていくと、実際の業務が理解しやすくなります。こうした理解の基礎があると、業務の記述をうまく進めていけるはずです。