■業務マニュアルを作るときの発想
1 記述することが基礎
先日の業務マニュアル講座の振り返りをしています。業務マニュアル講座自体が少ないため、本来は入門講座なのですが、管理者の方の参加が多くなっています。業務を書かないといけないと感じている方々に向けて、どこまで語るか、なかなか難しい問題です。
大きな組織の部長職の方から、新人研修として参加くださる方までいらっしゃいます。業務マニュアルというのはどういうものだろう…という感じで聞いている方と、マネジメントのツールとして業務マニュアルを捉えている方とでは、かなり立場が違います。
現場での作業手順を書くことは、しばしば必要となるはずです。若い方は、そこから記述の仕方を覚えていくのが自然です。実際の手順を記述する能力が必要になります。これが意外に出来ません。今後、業務の記述練習を重視したほうがよいかなと思っています。
記述の重視ということは、山崎正和も言及しています。<学問は、物事を記述しなきゃいけない><言葉による記述があってはじめて事実は存在することになって、論争が始まる>…とのことです[思考の道具としての言語を鍛える]。
2 制度の設定
同時に、管理職の方々に対して、いまよりももっと実際的なことまでお話しないといけないと思いはじめています。すべてを講義に詰め込めませんから、押さえておくべき必要項目を示した上で、いくかの事例をお話することになりそうです。
例えば、新しい部門に来る人向けに業務を解説する必要があって、業務マニュアルを作った人がいました。それなりの成果をあげていましたが、間違う箇所がいくつもあるとのことでした。その人が講義を聞いてよかったです…とおっしゃるのです。
講義での話のように、リスクの大きなところに、ここでミスが起きやすいという注意喚起の記述をしたら、ミスが減ると思う…とのことでした。それも一つの手です。しかし、お話を聞くと、対象者が若くて意欲もある人たちでしたので、別の提案をしました。
ゲームにしたらどうですか…と申し上げたのです。そんなにむずかしくない業務から順に、習得の認定制度を設けて、つぎつぎ乗り越えていくようにしたら若者達は一気に必要項目を習得しまいそうでした。それいいですね、という反応でした。
3 成果をあげる手段
正確に記述することは文書の基本ですし、丁寧に記述することも大切です。ただ、坂道は一気に上れ…ということもあります。生真面目なマニュアルを作ることも必要ですが、勢いが必要なケースには、やる気にさせるスパイスがあったほうがよいこともあります。
また、一定水準を超える実力をつけてもらうためには、通常の業務マニュアルに加えて、OJTを加えたほうがよいことが一般的です。ただ、よほどの人が指導するのでない限り、事前にきちんとOJTのプログラムを書いておく必要があります。
そのプログラムがあると、実際の成果との比較によって、どういうOJTが効果をあげるのか、わかってきます。それがノウハウにもなります。成果をあげるために、どういう手段をとるのがよいか、こうした発想も業務マニュアルを作るときには必要でしょう。