■エジソン式とラングミア式:西堀栄三郎のイノベーション原論

 

1 2種類のイノベーション

西堀栄三郎が『石橋を叩けば渡れない。』を出版したのは、1972年のことでした。まだ、イノベーションという言葉が一般化されていなかったようです。1975年出版の上田惇生訳『抄訳マネジメント』でもイノベーションという訳が使われていません。

西堀は、「創造性」と「発明」という語を使いながら、イノベーションを語ります。<創造性ということは建設が目的なのですが、いままでになかった新しいことをするわけですから、それまでのものを破壊することになる、その意味で両刃のやいばです>。

創造性をどう使うのか、目的が重要であると指摘した上で、二つの発想法があると言っています。一つはエジソン式発明、もう一つはラングミア式発明と呼んでいます。<エジソン式なのか、ラングミア式なのかをはっきりさせないといけない>とのことです。

 

2 偶然に影響されるラングミア式

エジソン式とは、<要求とか切迫感が先に出てきて、それに対する解決策として、何か新しい知識を要求するという形です>。ラングミア式とは、<新しい知識が生まれてきた、これを何かに使ってやろう、という形です>。

ここで西堀は「偶然性」を持ち出します。<抗生物質というものを考えて、ペニシリンのような抗生物質を合成して作れ、といきなり言われても、ペニシリンというものは偶然発見されてできたラングミア式によるもの>だから、作れないと言うのです。

ラングミア式には、偶然性が入り込むので、<いつ何日までに発見しろといわれてもできるわけはありません>。発見にルールがないのです。<ラングミア式のものを要求されているのに、研究をしている人の心の中は、エジソン式>ということがあるようです。

 

3 イノベーション理論の変遷

ここでイノベーションについての考え方の変遷を思い出します。シュンペーターは、当初、イノベーションを偶然の産物だと見ていました。ところがあるときから、偶然でないイノベーションを認め、いわば継続的イノベーションという発想が採用されます。

それを引き継いで、偶然によるイノベーションは影響が大きいが、計算できないとドラッカーは言っています。そして、組織が継続的なイノベーションを行う必要があるとも語っています。西堀の言うエジソン式が重要な地位を占めているということになります。

何としても発明しようとする切迫感があれば、エジソン式の発明は出来る…というのが、西堀の考えです。エジソン式に、<新知識はそれほど重要ではない>のです。既存の知識を組み合わせることが中心になるためです。

 

4 イノベーションは発明者に依存する

西堀の言う二種類のイノベーションの手法は、マーケティングでいう「マーケットイン」と「プロダクトアウト」に似ていますが、発想が違います。イノベーションを生むためには、市場調査よりも、発明する人の切迫感が重要だということです。

発明する人に大きく依存するのがイノベーションであるとも言えそうです。iPhoneを開発するときに、アップルが市場調査をしなかったというのは、別に驚くべきことではありません。エジソン式のイノベーションの手法にそったものです。

iPhoneに特別な技術がないと言った日本の技術者の発言が、見当違いだったのは、その後の経緯で明らかになりました。エジソン式のイノベーションでは、開発者の切迫感が一番重要だということになります。どこまで作りこんでいるかが問われているのです。

 

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