■成果をあげる仕組みを作るためのツール:業務マニュアルの作成
1 いわゆる業務マニュアルとは別種
先日、かつて会社の幹部だった方から、あなたの言っているのは普通にいう業務マニュアルとは違うね…と言われました。そうかもしれません。業務マニュアルの再定義をすべきだと思っています。いわゆる標準化した業務の手順書は脇役です。
研修や講座に参加される方の中に、従来の業務マニュアルでは、対応できないので参加しましたとおっしゃる方がいらっしゃいます。標準化されたものだけでは、付加価値がつきませんから、各個人に依存する業務の割合が大きくなります。
しかし、自分ルールで好きなように進めてくださいと言うのでは、不安定だということです。組織には、ある程度標準化されたルールがありますが、しかし、その部分を身につけたあとの業務に関して、皆さんがんばって…ということになりがちでした。
2 業務マニュアルが二系統に分離
業務マニュアルがなくても、OJTによって業務をおぼえていけばよいというのが一般的かもしれません。実際、標準化された業務なら、現行のOJTでも有効です。その意味では、標準的な業務を記述するマニュアルはそんなに重要でないともいえます。
こんなことからか、業務マニュアルが大きく二系統に分かれてきている感じがします。一つは、全体の業務あるいは中核の業務の仕組みを記述するもの、もう一つは、現場で作業するときの最前線の手順を記述するものです。
『無印良品は仕組みが9割』で注目されたMUJIGRAM(ムジグラム)は後者に当たります。現場の人向けに、現場の人の提案を生かして作られた作業手順を書いたマニュアルです。これらには図や写真が多く載っていて、具体的な指示がわかりやすくなっています。
3 作成の労力と成果との対比
現場で作業するときの業務マニュアルと、経営に直接的にかかわる業務の仕組みを書いたマニュアルでは、作り方が大きく違います。図や写真の多い作業手順書なら、操作マニュアルの作り方に類似した部分がかなりあります。作るのはそれほど難しくありません。
どちらかというと最近では、経営に関わる業務の仕組みを書こうとする人たちが多くなってきています。もう少し具体的に言うと、圧倒的な業務の成果を上げるために、中核の業務のやり方、仕組みを変えたいという方がかなり多くなっています。
業務マニュアルを作る労力とくらべて、成果がわずかではないかという発想の人が、たくさんいます。しかし一旦、たんなる作業手順の見直しではすまないと判断されたとき、現在の仕組みを書いてみて、どうしたらよいか考える必要性に気づきます。
4 マニュアルは業務改革のツール
例えば、営業成績が圧倒的な人の方法を、皆が実行できる仕組みにして、採用したいという希望があります。成績優秀者に、その方法を語ってもらっても、多くの場合、そういうやり方があるのかというエピソードで終わってしまうとのことです。
たしかに、その人独自の方法を担当者全員が実行できるなら問題ありませんが、そう簡単には行きません。しかし、方法の中核部分を明確にして行くと、マニュアルの形式にまとめることができるのが普通です。この種のマニュアルの場合、効果はすぐに現れます。
まず業務の全体像を把握するために、業務フローを書いていただいて、そのなかのどの部分が問題なのか、どうしたいのか、そのへんを詰めていきます。そのうえで、成果を上げる仕組みをどう組み込むか、考えていきます。業務改革のツールとも言えます。