■小室直樹の勉強法:論理構築の方法

 

1 世界的な業績:『ソビエト帝国の崩壊』

小室直樹著『ソビエト帝国の崩壊』は1980年に出版されミリオンセラーになりました。橋爪大三郎が『小室直樹の学問と思想』で[こういう原因でもって、こういうプロセスをたどって、こんな風にソビエトは崩壊するであろうと明確に言い切った]と評価します。

一般の書籍でしたが[世界的に見ても大変な業績だ]、[分析が、私の知る限りもっとも明快]と橋爪が言う通りです。[予言の構造を一口で言えば、”一種の機能不全で自己崩壊する”というかたちになっています]。なぜこうした分析ができたのでしょうか。

「構造-機能分析」の方法を一般理論として体系化する代わりに、[ソビエトの問題に当てはめて、そのリーズニング(論法)でもって分析しきった、非常な成功例]です。[マルクスの理論をほかならぬソ連社会に適応してみるという方法]をとったのでした。

 

2 オーソドックスな勉強法

マルクスの理論は、[資本主義社会はこれこれこういう社会であり、こういう構造を持っているが、そのために機能不全を起こして、崩壊するだろうという予言]です。小室はマルクスと同じ論法を使いました。そこにマックス・ヴェーバーの学問が結びつきます。

[現代ソビエトの問題とマックス・ヴェーバーの宗教社会学とが結びついているというのが、小室さんのいちばんの洞察なのです]。これらを可能にしたのは小室の学問の勉強法が[大真面目に過ぎるくらいにオーソドックス]だったためでした。橋爪は言います。

その勉強の方法というのは、一口で言うと、まず最も正統的な学説を学ぶということであり、しかも、各々の分野でもっとも正統とされるテキストを十遍、百遍と必死で読み抜き、その論理を完全に体得する、ということをします。学問は現実世界を説明する一里塚に過ぎませんから、説明できないところもたくさんあるわけですが、その理論と現実の間で苦しみ抜く、というステップを踏んでいる点で、彼ほどオーソドックスな人は他に見当たらないと思います。

 

3 「最低百回は読みなさい」

『ソビエト帝国の崩壊』が出版された1980年、当時『週刊プレイボーイ』の編集長だった島地勝彦は[編集者たる私はこの名著に感動してすぐに会いに行った]。[大学者はなぜか学校の成績の悪かった私を可愛がってくれた]と『異端力のススメ』にあります。

小室にとって『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(岩波文庫、大塚久雄訳)は生涯の”バイブル”であった。いつだったか、私はボロボロになった岩波文庫を見せてもらったことがある。カラフルな色鉛筆でたくさん線が引かれていた。よく見ると十二色あった。

小室は橋爪の言う通り、正統とされるテキストを徹底的に読み込んでいました。島地の証言からすると、どうやら線を引きながら読む方法だったようです。一冊を何度も読んだり書き込みをしていくのではなかったようです。島地は貴重な証言を記録しています。

「シマジ君、生涯で自分がいい本だと思ったら、その名著を最低十冊はまとめて買いなさい。そして最低百回は読みなさい。すると著者が何を言いたいのかわかるし、またあるときは眼光紙背に徹すといって、著者以上に物事がわかってくるものです」

 

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