1 ポイントは何であるのか
北京オリンピックの開催中ですが、ロシアがウクライナに攻め込むのではないかという報道がなされています。詳細はわかりません。ウクライナ国内の問題もあるのでしょう。たくさんの報道がなされると、ポイントは何であるのか、よくわからなくなってきます。
報道自体を読んでも、専門家でない人間にはわかった気にならないのが普通でしょう。大枠が見えないと、詳細な事情の意味も意義も分からないのです。ひとまず、何が一番の要因なのかと思いながら、それが書かれているところを探そうとしています。
しかし現在進行形のものごとに対しての判断は、あまり正確につけられそうにありません。多くの場合、何十年もするとズレていたということになります。古い対談集を見てみると、ピタッと当たっている人がいる一方、たいていが大きくズレているものです。
2 圧倒している40年前の発言
古い本が出てきました。『竹村健一の世相を斬る』です。1979年から1980年までにテレビで放送されたものを活字にしたものでした。[スタートから五十五年十月末までの五十六本の中から十二本を選んだ]とあります。全体の約2割の対談が選ばれました。
とはいえ、もはや40年以上前の対談ですから、ほぼ読むところはありません。前提条件も変わっていますし、興味がなくなったものもあります。しかしポイントを突くところは、古びていません。どんなものが古くならないのか、考えさせられることになります。
この本の中に「ソ連は瀕死の熊だという説には過大評価も過小評価も危険だ」という対談があります。小室直樹の『ソビエト帝国の崩壊』が出た後の対談です。この対談が12の対談の中ですべてを圧倒しています。いまでも、小室の発言は読むに値するものです。
▼マルキシズムの立場から言えば、社会主義ないしは共産主義ってのは、資本主義よりも後の段階、すなわちよりすぐれた制度でしょう。
だからそれが間違っておりましたから、資本主義に逆戻りするということは、ソ連のイデオロギーからいって自殺行為、だからソ連国家ってものは存在価値がないって事を公表する事ですからね。 p.61 『竹村健一の世相を斬る』
3 組織の柔軟性が問われる
マルキシズムの場合、悪い方向に進んでいっても変えられないということについて、小室は[だから深刻なんですね。それが悪いからやめられるというんであれば、わりと簡単なんですけど](p.60)と語っています。権威主義は硬直化して、効率が悪くなるのです。
効率の悪い組織では上手くいきません。[私営企業のいちばんいい点は、効率が悪かったり、もしくはお客の好みを読み違えれば、たちまち倒産することでしょう]。しかし[つぶしてしまったほうがいいに決まってるけど、それができないでしょう](p.63)。
生産性が悪いままのソ連は[外国に攻めていった場合には兵力三倍あろうが五倍あろうが、勝ったためしはない][連戦連敗](p.53)と指摘します。ポイントは、失敗を認めて、間違ったので変更しますと言って、実際に変更できるかどうかということです。
鄧小平の時代には、間違っていたと言い、変更もしているので、小室は[だから中国はわたしの意見では、近々、資本主義になるんじゃないかと思ってるんです](p.60)。こんな時代もありました。組織の柔軟性、間違いを変更する能力は、いまも問われるでしょう。