■哲学者の格や本物かを評価する方法:『哲学個人授業』から
1 哲学研究者の本の読み方
鷲田清一が永江朗を相手にした『哲学個人授業』で、「哲学の本はどのように読むか」を語っています。永江が[研究者は第一ページから順番にコツコツと読んでいくんですか]との質問に対して、[はい、必ずそうします]というのが鷲田の答えでした(p.289)。
さらに[原註は必ず読みます。研究者は絶対につまみ読みしません]、[最初にざっと読んでおいて次に精読するというのではなく、最初から一文一文読んでいきます。ですから、ひとつの本を二、三年かけて読み終えるというのはざらです]と言います(p.289)。
なぜこうするのか、[論理が積み上げられていますから。途中から読んでもわからない]というのが鷲田の答えです(p.290)。これで哲学がわかるようになるかというと、[わかるとも限らず](p.289)とのこと。哲学の研究者になるのは、大変なことです。
2 格や本物かを評価するための基礎
鷲田は[学生に「一人の哲学者の本を全冊、最初から順番に読んでいきなさい。そうしたら、他の哲学者の評価をするときにすごく楽だから」と言っています]と語ります(p.290)。学生の方も大変そうです。たぶん、これはほとんど実行できていないでしょう。
おそらくそれを実行した鷲田は、[しっかり読んでおくと、他の哲学者の格を評価できる。本物か偽物か、二番手の人か、すぐわかる]とのこと。[この本で取り上げたような大物を読む。せいぜい世界で20人くらいしかいません]と、耳寄りな情報を提示します。
哲学者で読むべき人は、どうやら20人くらいだそうです。『哲学個人授業』で取り上げた哲学者は九鬼周造や西田幾多郎も含まれる23人ですが、全員が世界の大物ではないのかもしれません。しかし哲学史の本を読めば、20人弱を絞り込むことは可能でしょう。
3 単著の教科書的な入門書の活用
私たちは、一人の人の著作をすべて読むようなことや、一冊の本を何年もかけて読むことは、簡単にはできません。しかし、格の評価や、本物か否かが評価できるようになりたいものです。鷲田の話を参考にしながら、別のアプローチがとれないものでしょうか。
まず対象を一冊の本に絞ることが可能かもしれません。その場合、全体像を示す本、完結した内容の本でないと困ります。さらに著者が大物であることも必要です。また最初の一文から順番に読んでいくわけですから、なるべく薄い本であることも条件でしょう。
そうなると、単著の教科書的な入門書が思い浮かんできます。定番と言われる入門書は、各分野にありますから、それらを選んで、きっちり読むことは役に立つはずです。いい歳をして、一文一文ていねいに、ノートを作りながら読むことになります。
200頁程度の定番の本、それも古くからある学問の本を読むことは、基本的な知識体系を学ぶのに役立つはずです。哲学、歴史学、法律学、数学、医学といった分野で、定番の入門書は、そうたくさんはありません。そのつもりで探してみると、見つかるものです。
