■資本主義とはどんなものか:『誰が国賊か』での渡部昇一の説明

     

1 資本主義は世界史の新現象

一言のコメントが、難しそうな問題を一筆書きしてしまっていることがあるものです。谷沢永一と渡部昇一の対談『誰が国賊か』で、渡部昇一は、資本主義と自然科学の関係を一言で説明しています。これはヨーロッパが飛躍した理由にもなるでしょう。

▼資本主義というのは、世界市場、いや人類史上における新現象なんです。なぜ新しいのかというと、それは自然科学と結びついた社会の変化だからです。こんなことはコペルニクス、ガリレオ以前のヨーロッパにも、またアジアでもエジプトでも、ありませんでした。 p.285 『誰が国賊か』

コペルニクスは1473年生まれ、1547年没です。ガリレオは1564年生まれで、1642年没。ケプラーは1571年生まれで、1630年没。デカルトの『方法序説』が出たのが1637年でした。ニュートンは1642年生まれ、1687年に『プリンキピア』を出版、1727年に亡くなります。

     

2 『国富論』は資本主義の理念・哲学

コペルニクスもケプラーも、ルネサンス期のプラトン主義の影響を受けています。自然科学は、哲学的な思考が生み出したものです。それらがさらに、資本主義を生みだします。渡部昇一は[コペルニクス以後の西ヨーロッパ文明は異常なもの](p.286)と言います。

[西ヨーロッパに誕生した資本主義社会というのも、一種、異常な存在][前例がどこにも見出せないという意味の異常さ]です。しかし、[放っておくわけにはいかない。そこで資本主義社会に適応できる理念を作ろうということになりました](p.286)。

[それを最初に作ったのがイギリス]であり、[アダム・スミスが現れて『国富論』を書いた。それで資本主義社会における理念、哲学が生まれるわけです](p.286)。『国富論』は、1776年に出版されました。同じ年、ワットは蒸気機関を完成させています。

    

3 個人の生命や財産を重視

なぜ資本主義が新現象であり、前例のない異常な存在なのでしょうか。[自然科学の進歩と社会変化がセットで進行したわけです。一つの発明、発見が一つの産業を作り出すという形ですから、スピードが怖ろしく早い]と渡部昇一は説明しています(pp..285-286)。

こうした資本主義を[アダム・スミスが理論化して、お墨付きを与えた]のです。なぜ、理論化できたのか、渡部は、イギリス哲学の伝統だろうを語っています。[個人の富を理論化し、正当に評価するのはアングロ・サクソンの流れ]でした(p.164)。

▼アダム・スミスに影響を与えたジョン・ロックとかデイヴィッド・ヒューム以来、イギリスの哲学は何よりも個人の生命や財産が大事だということを繰り返し述べてきたわけです。そして、その説に基づいて独立したのがアメリカであった。 p.164

ルネサンス期に古代ギリシャ・ローマに学び、プラトン主義が科学的思考を生み出しました。そこから生まれた資本主義が、経済発展を生み、それが個人の生命・財産の保護を強化することになります。こうしたプロセスは、考えるフレームにもなりそうです。