■日本語では役に立たない品詞分解:不可欠な体言・用言の区分
1 品詞として成立しない形容動詞
日本語の読み書きに、品詞分解がほとんど役に立たないというのは、知られたことです。現在の日本語文法の場合、品詞の概念自体があてになりません。たとえば形容動詞をナ形容詞と呼ぶ有力説があります。奇妙な活用表をつけて、用言だという主張です。
小松英雄は『日本語はなぜ変化するか』で、形容動詞などという品詞など成り立たないと主張しました。例えば、「静かに」「静かだ」「静かな」は活用になっていません。[活用は、本来、五十音図の同一行内における母音転換が基本]だからです(p.262)。
「静かだ」の「だ」は、「これは鉛筆だ」の「だ」と同様、「終止形語尾」と解されます。「静かに」は[動詞を修飾するだけであるから副詞」、「静かな」は[体言を修飾するだけであるから連体詞]と解するのが妥当でしょう(p.262)。すべて活用しない言葉です。
2 品詞分類できない「ません」
小松は「ません」を取り上げて、[品詞分類は、とかく、末梢にこだわりがちである]と言います。[マスは肯定、マセンはその否定であるが、この簡単な否定表現を品詞分解にかけると、厄介なことになる](p.257)のです。「マセ・ン」と分解できません。
[マスが助動詞マスの終止形なら、マセンのマセはその未然形で、ンは未然形に後接する助動詞の終止形でなければならないが、口語文法の助動詞一覧表に助動詞ンはない]、[簡単な日本語の表現が、品詞分解をしたばかりに説明できなくなる](p.257)のです。
マセンを[独立の助動詞と認めれば解決できる](p.258)ように見えますが、アリマセンとなった場合、[アリマセンを区切って発音すればアリマ/センになる。文法の単位が自然な発語と食い違っているなら、文法を修正する必要がある]でしょう(p.258)。
3 役に立たない品詞分解
日本語の場合、品詞を厳格に定義して、それに基づいて品詞分類をしても、無理が生じるということです。英文法のように、品詞を明確に定義しようとするアプローチが、日本語では通用しません。品詞分解をしても、日本語が理解できるようにならないのです。
「ある」「ない」、「いる」「いない」の場合、肯定と否定で品詞が違ってきます。「ある」「いる」は動詞、「ない」「いない」は形容詞です。動詞も形容詞も、ともに用言に当たります。日本語の場合、品詞よりも用言か体言かのほうが、重要な指標です。
存在の有無を表す「ある」「ない」、「いる」「いない」はすべて用言の終止形になっていて、文末に置くことができます。日本語の場合、文末は用言そのものか、あるいは「だ・である・です」などがつけば用言化して、用言複合体になるということです。
日本語の品詞分類、それに基づく品詞分解は、正確な読みを見出すために役立つものではありません。厳格な品詞分類は意味がありませんが、体言・用言という区別は不可欠なものです。また主体と文末といった要素の区分も、必要不可欠と言ってよいでしょう。
