■ビジネスリーダーに不可欠な体系化の練習
1 民法典の体系に戻った理由
松尾弘の『民法の体系』は、現行の民法典の体系とは別の、[権利を基準にして、その主体、客体、変動、効果という順に分析を展開する体系を採用](第1版はしがき)しました。これは法律を理解し、運用するときに、優れた体系であると思います。
しかし、『民法の体系』という本は、その後なくなり、民法典の体系に基づいた別形式に改編されました。現行民法典は、パンデクテン体系を採用しています。一般的規定を示し、その後に具体的な規定をおく体系です。松尾の試みは受け入れられませんでした。
現行の民法典の体系があって、その順番に条文が並んでいますから、現行の民法典の体系を知ることの方が、優先されることになります。ほとんどの教材や専門書が、民法典の体系にそっていますから、民法典の体系で理解していくほうが便利なのです。
2 ビジネスの標準的な秩序が示されている体系
実務家になるための教材だとすれば、民法典の体系に従うのも妥当かもしれません。しかし、ビジネス人が体系化の練習をするのに、民法典とは別の体系が示されている点に意味があります。ビジネスの観点からは、『民法の体系』で採用された体系が標準的です。
とはいえビジネス人が体系化を学ぶために、800頁の本を読むのは負担でしょう。当然、実務家になるための読み方とは違います。体系化を知るには、項目を見て、定義をチェックする程度で十分です。骨組みをノートにまとめれば、民法の概要が見えてきます。
この本は、[既存の秩序を反映した制度の体系](第6版はしがき)であり、[権利を基準にして、その主体、客体、変動、効果という順に分析を展開する体系](第1版はしがき)です。ビジネスの標準的な秩序が示されている体系と言ってよいでしょう。
3 リーダーには、体系化の練習が不可欠
法律の勉強をするための教材と、体系を学ぶための教材とでは、目的が違いますから、評価が違ってきます。もし体系のトレーニングのための教材を作るなら、記述方法も違ったかもしれません。別の目的で、別領域の本を活用することができるということです。
同じように別の法体系も参考になります。憲法や刑法の体系は、もう一度見て置く価値があるということです。ルールを列記する法律を、どういう体系で示すかということが問題になります。法律は、長い時間をかけて、体系化に取り組んできました。
いったん法律の体系に慣れてしまえば、それが共通認識になります。安易に変更すれば、混乱するはずです。マニュアルの場合でも、いったん作られた体系が不便であっても、慣れたものの方が良い場合もあります。習慣・慣習が大切な要素になるということです。
マニュアルを最初に作るとき、あまり体系的な構成にしようとは思わないものです。たいていの場合、必要項目を見て終わりになりますから、それでよい場合もあります。しかし全体を示す場合、体系化が必要です。リーダーには、体系化の練習が不可欠でしょう。
