■体系化のお手本:法律の体系と『民法の体系』

     

1 体系的・体系化

体系的・体系化という言い方をすることがあります。少し前に、業務が体系的に整備されていないと主張した方がいました。業務マニュアルが体系化されていないというコメントも見たことがあります。体系的とか、体系化というのは、どんな概念なのでしょうか。

以前、体系ということが問題になって、いくつかの例を上げて、言葉で説明したのですが、やはり簡単には理解されませんでした。言葉で概念を説明するよりも、実際の例を見たほうがわかりやすいでしょう。体系のお手本として、参考にしてきたのは法律でした。

ルールを記述した多数の条文を上手に使いこなすためには、法律の場合、法律自体を体系化すること、あるいは使い方を体系的に行うことが必要になります。マニュアルの体系化を考える場合、法律で採用されている体系が参考になるはずです。少し見てみましょう。

      

2 松尾弘『民法の体系』

松尾弘『民法の体系』という本があります。第1版のはしがきに、[市民法の基礎である民法の全体的な仕組みを体系的に明らかにしたいと考えた]とあります。日本の民法典の場合、総則、物権、債券、親族、相続という「パンデクテン体系」になっています。

パンデクテン体系は、[その基礎にある体系化の原理が、≪より一般的な規定から、より具体的な規定へ≫と展開する方法である点に基本的特色がある](p.16:第6版)のです。一般的なものを押さえて、具体的なものを見ていく方法は、体系的な理解になります。

これが唯一の体系ではありません。別の体系として、『民法の体系』では[権利を基準にして、その主体、客体、変動、効果という順に分析を展開する体系を採用](第1版はしがき)しています。「誰が、何を、どのように、どうする」という体系です。

     

3 基準をもとにルールと仕組みを考える

一般的な規定を前に置き、具体的な規定を続けて並べる体系に比べると、『民法の体系』で採用した体系は、我々の思考に近いものになっています。「Ⅰ 序論」「Ⅱ 権利主体論」「Ⅲ 権利客体論」「Ⅳ 権利変動論」「Ⅴ 権利効力論」という構成です。

松尾は[民法の「体系」は、①基本原理に基づいて導き出された規範の体系であるとともに、②既存の秩序を反映した制度の体系でもある](第6版はしがき)と記していました。既存秩序を反映した体系のほうが、法律を運用するときの思考に近いように思います。

現行の民法典の秩序とは別の、思考の秩序があるということです。体系化のあり方は、一つに固定されるわけではありません。ビジネス人が、社内外のルールの体系を考える場合にも、権利を基準にして、既存の秩序を反映した制度の体系化は参考になります。

業務マニュアルを作成する場合にも、ルールを理解するときに、どんな仕組みになっているのがわかりやすいのか、「ルール」と「仕組み」を考えることが不可欠です。こうした体系化を行うときに、何らかの基準が必要になる点も、考えておく必要があります。