■ジョブを定義する前提:観察と知識
1 観察の必要性と限界
物事をよく観察することが大切なのは、あえて言うまでもありません。たとえば、朝、東の空から太陽が昇り、南中して、西の空に沈んでいきます。南中する時刻が正午です。太陽の運行が基準になって、時計が出来ました。時間は客観的な基準になっています。
しかし、こうした観察は、観察する地域に依存しているのは言うまでもありません。南半球に住む人の観察では、正午になるのは南中ではなくて、北中ということになります。場所によって、観察結果が変わるということです。観察は万能ではありません。
それだけでなく、私たちはすでに、太陽が動くのではなくて、地球のほうが太陽の周りをまわっているということを知っています。これは観察では、わからないことでしょう。科学的な知識が獲得されて、私たちは地動説を受け入れることになりました。
2 知識の更新
私たちは物事を知覚して、外界を認識していることになります。こうした認識が基礎になって、物事の判断をするのは自然なことです。ところが科学的な知識がある場合、ものの認識の仕方が変わってくることになります。知識が不可欠になっているのです。
このとき知識となるものは、客観性が必要になります。いつ、どこで、どんな場合に、共通する特徴、ルールが成立するかを明確にすることによって、知識になるということです。知識とは、安定性のある理解を獲得するためのものだということになります。
知識を獲得するためには、合理的で論理性があり、また科学性のある思考が基礎になっているでしょう。このことは、知識は決定的なものではないということになるはずです。合理性・論理性の観点から、それまでの知識が更新されるということが出てきます。
3 ジョブの定義は確率調査
ビジネスの話と関連して知識について語るとすれば、観察や経験だけでは、獲得するのに不十分だということです。日本の場合、現場主義を大切にしてきました。これは今後も大切ですし、そこでの観察や経験は貴重なものであり続けます。
しかし、それだけではせっかくの観察や経験が活かせない場合があるということになるでしょう。少なくとも落とし穴があると思っておいたほうがよさそうです。別の分野とか、他の業種・職種のことなどに注目し、検証しながら業務をチェックする必要があります。
これは理論化というよりも、条件を明示し、どういう場合に、どういうことが起こりうるかということの確率調査に近いものです。条件と結果をもとに、別なケースや新たなケースに、どこまで適応させることができるのかを検証していくことになります。
客観性を求めていくことによって、安定性とともに、修正力が獲得できるようになるということです。こんな面倒なことはしないという職場も多いでしょう。ジョブ型を導入する場合に、ジョブの定義をどうしたらよいのかという話の時に、こんな話をしたのでした。
